大振り
□『落ちつけっ!!』
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「阿部君っ!」
自分を呼ぶ聞きなれた声に振り返ると、予想通りの相手が息を切らせ真っ赤な顔でこちらを見ていた。
「どうした三橋?なんかあったのか??」
これが部活中や、田島と一緒に7組まで来てオドオドしながら話しかけてくるのなら珍しくない。
しかし、今のように廊下を歩いてる阿部をわざわざ走って追いかけて来て話しかけるなんてことは始めてだった。
嫌われてはいないと思うが、自分の態度に三橋がビクビクしているのはわかる。
こんな風に呼び止められるほど自分に慣れ親しんでないことも…。
だからこそ、珍しいものを見たと驚くよりも、何かあったのか?という焦りの方が強くこみ上げてくる。
「うえっ!?…あっ、違くて、あの…、阿部君が急いでるなら…あ…とでも………」
ハァ―
思わずため息が出てしまう。
呼び止めた時の勢いは消え失せ、いつも通り目をそらしビクビクする三橋にやるせない思いがこみ上げてくる。
「あ〜、んじゃ悪いけど15分位待てるか?
昼飯食い終わる頃には戻るから先に食ってろよ」
三橋は俺の言葉に弾かれたように顔を上げ、こちらが気圧されてしまうくらい強い視線で射ぬいた。
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