Love Parade
カシャッ、カシャッ
無機質なカメラのシャッター音が室内に響く。
ついでにフラッシュのせいで目の残像が消えない。そして痛い。
「おい楸瑛、目が痛いし煩いから写真を撮るのを止めろ」
「なんで?煩いのは謝るけど、フラッシュは仕方ないよ。それに君を撮っているわけじゃないし。目をこっちに向けなければいい」
実際その通りだ。今楸瑛は絳攸ではなく、無生物を撮っていたのだ。例えば、目に染みるほど蒼く晴れ渡った空や雲、華麗に咲き誇る薔薇や百合、澄んで綺麗な海。
その横で絳攸は読書をしていた。何時もなら無視をして読書に没頭するのだが、何故か今回は気がついたら楸瑛の行動を目で追っていた。というより真っ黒な古めかしいカメラを追っていたのかもしれない。
「…さっきまで横で暢気に寝ていやがると思ったらいきなり写真を撮り始める。訳がわからん」
「ああ、ごめんごめん。なんか急に残したくなって」
「何を?」
「…自分が愛しているモノ」
そしてまた、撮影を再開する。今度は木に留まっている不思議な色合いをした羽を持つ鳥、昨日砂浜で拾って来た白い貝殻、水槽の中の赤と青の熱帯魚。
「馬鹿じゃないのか、お前は。そんな無意味な事」
「うん、馬鹿は認める。けど無意味ではないと思うよ」
片や会話を交わしながら少しずつフィルムを減らしていき、片や会話を交わしながら少しずつページをめくっていく。
「愛するモノは記憶の中に在るのに、こんな形で残すのはある意味馬鹿で無意味かもしれない」
私は記憶の残像で満足するほど出来た男じゃないからね、とふざけた調子だったが、不意に真面目になって続ける。
でもね、
それを見て幸福(しあわせ)を感じる事は決して無意味ではないと思うんだ
最後の言葉の真摯な響きに、絳攸は顔をあげる。いつの間にかシャッターをきる音は止まっていた。
暫くその場は静寂に包まれ、二人の絡み合う視線が残っていた。
「……そう、だな」
ふんわりと、絳攸は微笑う。
楸瑛はその微笑みにカメラを向け、シャッター音を一つ響かせた。そして胡散臭い笑みを漏らしながら一つの台詞を放った。
「あとね、私は君も愛してるから」
その瞬間、真っ赤になった絳攸が楸瑛の顔に本(ハードカバー)を放った。
End
なんか…楸瑛が楸瑛じゃない気がする…。でも、比較的この文は気に入っています^^