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□かわいいキミに【803】

蜜から急に呼び止められた。振り返ると、
「はち様―最近寂しいよね、切ないよね、1人は嫌だよね?って事でこれあげるね!!」
腕に押しつけられた物を見ると、聖だった。しかし、いつもより小さく(もとから小さいけどね)しかも耳…犬耳?
「蜜…どういう…」
聞こうとしたら走って行く蜜の姿が。
目まいがした。
「どうしようかな…」
腕の中の聖は眠ったままだし…。とりあえず仕事も終わっているし、帰るか。
家に着いても、まだ眠っている聖。うーん、こうして眠っているとかわいい。耳がときおりピクピク動く姿に悪戯心がわきついつい耳を触ってしまう。
「やわらかい…」
それでも起きない聖につまらなくなり、起こすことに。
「聖…聖…起きて。」
「う…ん…」
まだ眠いのかなかなか起きてくれない。
今度は耳元で、
「聖…起きてよ。」
あっ…やっと起きた。目をすってぼんやりした表情でこちらを見る聖に。
「おはよう、聖。ねぇ…どうしてこうなってるのか説明してほしいなぁ。」
状況が飲み込めない聖は目をパチパチさせて、
「はち…?なんでおでここにいるんだ?」
「蜜からね、聖のこと任されちゃったんだよ。聖ってばずっと起きないし、とりあえず家に連れて来たんだよ。」
「そっか…おで蜜の家に遊びに行って気付いたら眠っちゃって起きたらここだったんだ…」
「そうなの?(蜜め…なにかしたな)聖、鏡見てみて。」
手鏡を聖に渡す。
「なっ…おで!なんで…耳?それに幼くなってる…」
「蜜になにかされなかった?」
「普通にあって曲の事で話があって話てて…コーヒー飲んだくらいで、急に眠くなってきて…後は覚えてない。」
「きっとなにか薬でも入ってたんだよ。蜜には今連絡つかないし…明日スタジオで捕まえて話聞こうか。」
「はち…怒ってる?顔がこわい…。」
「蜜には怒ってるけどね。聖に変なことして」
「別にっ!!なにもされてないっ!!」
「本当に?」
うなずく聖によしよしと頭を撫でてあげた。すると、気持ちよさそうに目を細める聖。
「ならいいんだけど。じゃあ、明日も早いし今日は寝ちゃおうか。朝になったら治ってるかもしれないしね。」
「うん…ありがとう、はち…。」
「どういたしまして。悪いんだけど…ベットひとつしかないし一緒でもいい?今の聖なら小さいし問題ないと思うんだけど(笑)」
「なっ…!いいよ!どうせおでは小さいしな!!」

「ふふふっ…ありがとう。じゃあ俺はお風呂入ってくるから、先に寝てていいからね。」
お風呂場に向かって行くはちを見送りながら、
「はちは、いぢわるだな…」
そのつぶやきは、はちには聞こえず。
「さて…じゃあ寝ようかな。寝室は…。」
こっちかな…当たった。黒いシーツのベットに間接照明がひとつ。はちらしい落ち着いた部屋。
ベットに横になると、
「はちのにおいだ…」
当たり前のことに動悸が早まる。
「蜜め…明日覚えてろよな!」
しばらくすると、
「聖?もう寝ちゃった?」
「はち…寝てないよ。ほんとなんでこうなってるのか…ごめんな…。」
「聖が謝る事じゃないよ…。じゃあ寝ようか?」
「うん…。」
おでが壁側で、はちと背中合わせ。
お風呂上がりだからか、はちからはいいにおいがする…背中から熱が伝わって寝れない…。
「ねぇ…はち?おで元に戻れるかな…?」
「聖?きっと大丈夫、心配しないで。」
はちがこっちを向いてくれた。おでもはちと向き合う。
「でも…もし戻れなかったら…。」
「その時は俺が聖といてあげる。だから大丈夫だよ?ねっ?」
はちに優しく微笑まれて頭を撫でられる。安心すると同時にどきどきする。なんだ…この気持ち。
「はちっ…!ほんと?」
「ほんとだよ?聖眠れないなら、手つないで寝ようか。そしたらきっと眠れるよ。」
「うん…あったかい…。」
はちの手は暖かくて気持ちいい。
「聖、おやすみ…。」
「おやすみ…はち…。」
気付いたら眠りに落ちていた。

翌朝起きてすぐに頭を触る。耳は消えてないようだ。
「うぅ…なんで…」
泣きたくなっていると、
「おはよう、聖。良く眠れた?」
朝から、さわやかなはちに。
「はち…耳消えてない…体も小さいままだし…」
困った顔をしたはちは、
「うーん…、とりあえず朝ご飯食べよ?顔洗っておいで?」
仕方なく洗面台に向かう。鏡を前に、
「どうして消えないんだ?」
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