novel1
□空から降る、(K)
1ページ/3ページ
旅の一行がバラバラになってしまった夜魔ノ国。
言葉が通じないということが、こんなに不便だとは思わなかった。
黒鋼は夜叉王との会食を終え、部屋に戻る途中だった。
一緒にこの世界に来たファイは、先に部屋に帰らせてある。
彼は夜叉王とも会話が通じないし、この世界では特異な容姿のせいで、やたら注目を集めてしまっているのだ。
彼自身、この状況に少し参っている部分が見えたので、黒鋼はファイを先に部屋に返した。
黒鋼は夜叉王から、残りの旅のメンバーの情報を知りたかったのだが、有力な情報は今のところ一つもない。
明かりの少ない薄暗い通路。
黒鋼は男の叫び声を聞いて、ふと足を止めた。
叫び声というよりは、断末魔のような。
黒鋼がその通路の死角、さらに暗いところに足を進めると一人の男とぶつかった。
その金色の髪ですぐに誰か分かる。
驚いたように振り返ったファイは、黒鋼を見るなりホッとしたような表情を見せた。
「……どうした?」
黒鋼は怪訝な表情でファイを見た。
ファイは自分の腕を押さえている。
まるで負傷しているようだ。
黒鋼がさらに奥に視線を向けると、二人の男が倒れているのが目に入った。
一人は股間を押さえてうずくまっており、もう一人は足を押さえている。
叫び声はおそらく足を押さえている男だ。
「おい、なんだこれ。何したんだ、お前」
黒鋼は取り合えず説明を求めたが、ファイが言っていることが分からない。
「××××」
「怪我したのか? あいつらにやられたんだな!」
「××××」
ファイはいつものように笑顔だったが、押さえる腕はそのまま。
痛めているのは確かだろう。
こんなときまでヘラヘラ笑いやがって。
黒鋼が一気に不機嫌になる。
話も分からないので、黒鋼は倒れている男を掴み上げた。
「おい、てめぇ。人の連れに何やったんだ。あぁ?」
怒りに任せて倒れている男の胸倉を掴みあげた。
股間を押さえているその男は、息も絶え絶えで、一体何をされたのか一目瞭然だ。