novel1

□空から降る、(K)
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 旅の一行がバラバラになってしまった夜魔ノ国。
 言葉が通じないということが、こんなに不便だとは思わなかった。


 黒鋼は夜叉王との会食を終え、部屋に戻る途中だった。
 一緒にこの世界に来たファイは、先に部屋に帰らせてある。
 彼は夜叉王とも会話が通じないし、この世界では特異な容姿のせいで、やたら注目を集めてしまっているのだ。
 彼自身、この状況に少し参っている部分が見えたので、黒鋼はファイを先に部屋に返した。
 黒鋼は夜叉王から、残りの旅のメンバーの情報を知りたかったのだが、有力な情報は今のところ一つもない。


 明かりの少ない薄暗い通路。
 黒鋼は男の叫び声を聞いて、ふと足を止めた。
 叫び声というよりは、断末魔のような。


 黒鋼がその通路の死角、さらに暗いところに足を進めると一人の男とぶつかった。
 その金色の髪ですぐに誰か分かる。
 驚いたように振り返ったファイは、黒鋼を見るなりホッとしたような表情を見せた。


「……どうした?」


 黒鋼は怪訝な表情でファイを見た。
 ファイは自分の腕を押さえている。
 まるで負傷しているようだ。
 黒鋼がさらに奥に視線を向けると、二人の男が倒れているのが目に入った。
 一人は股間を押さえてうずくまっており、もう一人は足を押さえている。
 叫び声はおそらく足を押さえている男だ。


「おい、なんだこれ。何したんだ、お前」


 黒鋼は取り合えず説明を求めたが、ファイが言っていることが分からない。


「××××」
「怪我したのか? あいつらにやられたんだな!」
「××××」


 ファイはいつものように笑顔だったが、押さえる腕はそのまま。
 痛めているのは確かだろう。
 こんなときまでヘラヘラ笑いやがって。
 黒鋼が一気に不機嫌になる。
 話も分からないので、黒鋼は倒れている男を掴み上げた。


「おい、てめぇ。人の連れに何やったんだ。あぁ?」


 怒りに任せて倒れている男の胸倉を掴みあげた。
 股間を押さえているその男は、息も絶え絶えで、一体何をされたのか一目瞭然だ。



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