novel1

□自動販売機。
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「ねーねー、黒たん、ちょっとこっち来て」


 サクラの羽根を捜して歩いている途中、ファイが前を歩く黒鋼を呼び止めた。


「変な名前で呼ぶんじゃねぇ」


 黒鋼の言い方には、もう覇気がない。
 さすがに毎日毎日訂正するのも疲れるらしい。
 ファイは笑った。


「ねぇ、これ面白くないー?」
「なんだこれ。でけぇ箱か?」


 ファイが指指す方向にあるのは、自動販売機。
 ファイの国にもなければ、黒鋼の国にもない。
 漢字が読めないファイには何が何だか分からないが、黒鋼だって全ての文字が分かるわけじゃない。


「さっきここに居た人がね、ここにコイン入れたら、下からこの中のものが出てきたんだよ」
「……ふぅん、じゃあ入れてみろよ」
「コインを? ……うーん、どのコインだろ……」


 小狼が空汰から渡された蛙の財布。
 中にはコインがいくつか入っていたが、コインの種類だってファイには分からない。


「適当でいいんだよ、適当で」


 黒鋼はパッと財布を取り上げると、一番大きなコインをコイン投入口に入れた。
 途端にピッとボタンにランプが付く。


「で? 次は?」
「なんかボタン押してたような気がするー」
「どのボタンだ?」
「……さぁ、そこまで見てなかった」


 ファイは笑ってそう言った。
 ファイもこの箱が珍しかっただけで、これが一体何なのかまではよく分かっていないのだ。


「どれでもいいんじゃねぇのか?」
「とか言ってー、順番間違えると爆発しちゃうとかかもよ?」
「それはねぇだろ! 何のために爆発させるんだよ!」
「そもそもこれって何なの? 何が出てくるんだろ」
「さぁな。武器じゃねぇか? 固そうだし」


 ランプは付いたまま、なかなかボタンを押せずに二人が止まっていると、モコナを連れた小狼がやってきた。


「黒鋼さん、ファイさん! どうしたんですか?」
「あ、小狼君。見てこれ、なんだと思うー?」


 ファイが小狼に尋ねたが、勿論小狼だって自動販売機を見たことあるわけじゃない。
 きょとんとして、その箱を見ている。


「モコナ知ってるー! それって自動販売機! 飲み物が飲めるの」


 小狼の肩の上で、モコナが叫んだ。
 誰か何かを言うより早く、モコナはぴょンっと飛んで、ボタンの一つに体当たりした。


「「「あ」」」


 ガコンと音がすると、何かが下に落ちてきた。


「……ビックリしたー。モコナ今何したの?」
「何ってー、モコナボタン押した! 押したら飲み物出てくる!」


 えい、えい、えい、とモコナは誰かが止める間もなく、続けてボタンを押した。
 押すと同時にガコン、ガコンと、下に何かが落ちてくる。


 ファイが屈んで落ちたものを取り出した。
 黒鋼は怪訝な顔をしてそれを眺めている。


「おい、これのどこが飲み物なんだ?」
「中に入ってるんじゃない? ほら」


 ファイが取り出した缶を振ると、中に液体は入っているような音がした。


「ちょうど四つあるし、みんなで飲もう」


 ファイは取り出した缶を、四人それぞれに分ける。
 開け方をモコナに教えてもらい、小狼は感心したように呟いた。


「すごい。人がいないのに飲み物が買えるなんて」
「ねー、便利だよねー」


 次の瞬間。


「おわっ!」


 黒鋼が開けた缶だけが、突然中身が噴出してきた。
 元から不信感を持っていたせいで、余計に驚いてしまう。


「おい、なんで俺のだけ爆発するんだよ!」
「あー! 黒鋼のやつは炭酸! 振ったら駄目なんだよー!」


 モコナの指摘に、一瞬みんなの動きが止まる。
 ファイが黒鋼を見て、綺麗な笑顔で微笑んだ。


「あ。それオレが振ったやつだねー。ごめんね、黒様」
「……てめぇ……。わざとじゃねぇだろうな」
「まさかー。……そういう、運命なんじゃないかな?」


 全く納得のいかない理由で、ファイは笑った。
 何が運命だ!なんて言って、黒鋼はやっぱり怒り出す。
 モコナが「運命だ、運命だー!」なんて囃し立てると、黒鋼は怒ってモコナを追い回した。


「ついてないねぇ、黒りんはー」


 笑いながら、ファイはそう呟いた。
 からかったらからかっただけの反応が返ってくる。
 面白い奴だなぁ。
 ファイはそう思いながら、モコナを追い回す黒鋼を見てふと微笑んだ。


End.

 タイトルそのまま(汗)
 全然中身のない、どうでもいい話です。
 とりあえず、ファイが思う黒様が書きたかったんだけど…(汗)



2008/4/19

 

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