short story
□依存関係
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明日から一ヶ月間任務になった。
普通にご飯食べて普通に何気ない話をして。思い出したかのようにそう口にすると、獄寺は特に反応せず、へえ、とだけ言った。
マフィアとなって初の大きな任務。
普段は大体獄寺と一緒に行くようなのが多いけれど、今回はさすがに違った。
「珍しいな」
「…ああ。初めてのデカい仕事っぽい」
「何処へ?」
「フィレンツェまで。敵マフィアが出たらしい」
こうやって、同棲を始めてから一ヶ月間も離れることなど今までなかった。
長くても最低一週間。
それだけでも無理だったのに、今回の一ヶ月間なんて大丈夫なのだろうか。
「変なミスはするなよ、十代目にも迷惑がかかる」
それなのに獄寺は素っ気ない態度。
強がっているのだろうか。
逆になんだか痛々しくも見えてしまう。
「ああ、俺も甘えてばっかじゃ駄目だと思うし」
食器を片付けながらそう口にした。
ツナだって今まで俺達のことを気遣ってくれていたみたいで、あまり長い期間の任務は頼まれることがなかった。
今回も申し訳なさそうに頼まれたが、私情で断るわけにはいかない。
それに、ボスの命令は絶対に、だ。
食器を片付け終えるとソファに腰掛けている獄寺の隣に座った。
「獄寺はさ、」
「あ?」
「俺が居なかったら寂しくない?」
「別にお前が居なくても変わんねぇし、俺は」
「寂しいよ」
「…え?」
「俺は一ヶ月も獄寺に会えないなんて、寂しい」
いつも一緒に居るのが当たり前だから、寂しいのなんて当たり前だ。
そう思ったことを口にした。
「……じゃあ、俺の写真でも持っていけばいいじゃねえか」
「…そういうことじゃなくて」
「マフィアになって、ずっと離れずに居られることなんて無理なんだよ」
「そうかもしれないけど」
「………」
「獄寺」
そっと抱きしめれば、獄寺はぎゅっと腰に手を回した。
「寂しくないなんてわけ、ねぇじゃんかよ…」
…まさかこんなにお互い依存してるとは思わなかった。
もう一度強く抱きしめて、お互いに温もりを感じあった。
「まあ携帯があるから、いつでも声が聞けるし」
「あまり仕事中に電話したりするなよ」
「そういう獄寺もするくせに」
「馬鹿」
一ヶ月後、無事に帰ってきたとき、携帯料金がものすごい額になっていたことは内緒だ。
end
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