short story

□What's love?
1ページ/1ページ


こんなヘラヘラしてて野球バカでおまけに勉強もできなくてしつこくてよく喋りかけてくる、こんな短所がたくさんあって、長所を挙げろなんていわれたらひとつもない。
全然良いとこがないこんな奴にどうして惚れてしまったのだろう。

もういっそのこと嫌いになれたら良いのに、ふとそんなことを思い、ベッドに寝ころんで山本に背を向けた。


「もう寝るの?」
「ああ」
「え、まだ6時なのに?」
「いいから」
「ねえ獄寺寝ないでよ」
「うるさい」
「えー」


どうしてか学校から帰ってきてから、熱があるような気がする。
でもそれは体が悪いわけでもないし、なんていうか、頭がくらくらするのと、体が熱っぽくて熱い。

嫌いになりたい、そう思いたいのに、心の中は触れてほしい、とかもっと話しかけてほしいとか、山本のことだらけで結局嫌いになんてなれねえんじゃねえの。
それでも嫌いになりたくて、もうこんなやつと関わりたくないと思い込むようにした。


「獄寺」
「あーもううるせぇっ!話しかけんな馬鹿」


冷たく言い放って、布団に潜り込むとしん、と静まり返った。
さっきまでうるさかったのが、急に静かになるとなぜかほっとした。でもそれと同時に、怖くもなった。

嫌いになれたらいいのに。

好きか嫌いか、どっち?と訊かれれば、絶対嫌いだと即答するけれど、やっぱり側に居て欲しいし、側にいたい。
そう思っている自分は不条理だ。けれどそう思ってしまうのだから仕方がない。


「……はぁ」


静かな部屋に響いた山本の溜息に、意識が引っ張られた。
姿は見えないからどんな表情をしてるかとかはわからないけれど、その溜息を聞いて急に不安になった。

山本はこんな冷たく言い放った俺に呆れているのかもしれない。
それか、俺の態度に怒っているのかもしれない。

嫌いになろうと決めていたのに、逆に嫌いになられるのが怖くて、不安で堪らない。


いつだか山本に好きだと言われたとき、俺も好きだと答えた。
それから余計に意識してしまい、山本は本当に俺のことを好きなんだろうかとか、どんな気持ちなのかとか考えることが多くなった。
気を惹きたいと何度も思い、冷たい態度などを今までとったけれど、結局あまり上手くいかなくて、不器用なのだからもういっそのこと素直になれればいいのに。
でも素直になれなくて。

山本の溜息を聞くことは今まで初めてで、やっぱりもう呆れたんだ、中学生の恋愛なんてすぐに終わるものだ。
そう考えると泣きたくて堪らなくなった。
乾いた唇をぎゅっと噛み締める。


「とうっ」
「わっ」


ばふんと布団が捲られたかと思えば、山本が急に腹をこそばしてきた。
一瞬何が起こったかわからなかったけれど、くすぐったくて笑ってしまった。


「へへ、俺が怒ったとでも思った?」


にっこりして言うからむかついて、枕を投げつけて壁側をもう一度向いた。

そう思ったっつーの。もうてっきり俺のことなんて嫌いだと思ってた。
けれどその言葉を聞いたとき、安心してまた涙が溢れそうになった。

山本が顔を覗いてきて、え、うそ、獄寺泣いてる!?と言ったから、泣いてないともう一度枕を投げたけれど、頬が濡れてる気がしたからきっと泣いていたんだと思う。
心配させてごめんな、と抱きしめられたときにはまた涙が出そうだった。

恋愛は嬉しいこととか滅多にないから、小さなことを大切にしなきゃいけない。
そんなことを誰かから聞いたことがあったような。


「俺は、あのときと今の気持ちは変わらないよ」


むしろ今のほうが好き、かも。
と言って涙を親指でそっと拭ってくれた。

その言葉を聞いたあと、顔が熱くなって、恥ずかしくなった。
嫌いになれたらいいのに。
そう思っていたけれど結局俺は、コイツのことなんか嫌いになれないんだ。


好きな人を嫌いになんてならなくていい。
俺はこのまま、山本のことを好きでいようと思う。















end
───────────
百合さまに捧げます、16000キリリクでケンカしつつも仲良しな山獄です。
ケンカをしてない気が…する…!(土下座)
話がずれてしまいまして申し訳ございません!
内容と違うものでしたら書き直しなど致しますのでいつでも言ってくださいませ!
キリリクありがとうございました^^




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]