short story

□Love me more
1ページ/1ページ





「獄寺」


すき、あいしてる。


ふたりきりになったときに必ず言う言葉が、それ。
後ろから抱きしめて、耳に小さなキスを何度もする。くすぐったそうに身をよじる獄寺は、なんとも可愛らしい。


この言葉を囁くのは、自分なりの愛情表現、それと、恋人からもこの言葉を言われたいから。
お互いに愛し合っていることは知っている。それじゃなきゃ付き合っているなんていえないし。

でも、どうしてもこの好き、の二文字はなかなか聞けないものだから俺はこうして頑張っているのだけど。


「獄寺は俺のこと好きじゃないの?」
「……は?」
「俺、獄寺から好きってなかなか言われたことないし」
「ばか、そんなん毎日言ってたら俺まで馬鹿になる」


だいたいお前は好きって言い過ぎ、ちょっとは抑えること出来ねーのかよ。
とか言っちゃって。
獄寺は愛の言葉を俺が囁く度に、隠してるんだろうけど嬉しそうな表情をするのを知ってる。


「じゃあこれから抑える」
「好きにすれば」
「そのかわり減らしたぶん獄寺が言ってよ。好きだって」
「…お前さあ、俺にそんなに好きって言われたいの」


そっとベッドに押し倒して、ちゅ、とリップ音をたてながら首筋にキスを何度もした。

そりゃあ、好きだよ、愛してる。なんて言葉を自分の一番大切な人から聞きたくない奴なんていない。
そっと唇にもキスをして、透き通るような碧色の瞳にもくちづけをした。


「好き、って言って」


顔がぶつかるぐらいの至近距離。
俺の視界には今、獄寺しか映っていない。

細い腕を伸ばし、首に巻き付くように獄寺はそれを絡ませた。


「…好き、やまもと」
「もっと、言ってよ」
「好き」
「もっと、」
「…好き」



すき、あいしてる。


そう言う獄寺が愛おしくて、そう動く唇が愛おしくて。




言葉だけじゃ伝わらないこともよくあるけれど、俺にとってそれは何より大切な言葉だった。
もっと、もっとたくさん、好きだと言って。










(…まだ足りない。もっと愛してよ)















end
──────────
ブラウザのバックでお戻り下さいませ。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]