short story

□好きだと言えば、本気にしますか?
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名も知らない女子から昼休みに屋上へ来て下さいと、声をかけられた。
何、と訊いてみたがそのときにはもうその女の子は駆けて行き、小さくなっていた。
…あぁそっか、このパターンは。

行かないなんていうのも相手に悪いだろうし、昼休みになったら屋上へ向かった。
外へ出ると今日は快晴、野球も思いっきりグランドで出来るなぁと空を見上げていたら、あの、と、か細い声がした。


「今日の朝話しかけたんですけど、」
「あぁ、知ってるぜ」


にっこりと笑いかけると、目の前の女子も緊張がほぐれたのか顔に少しの笑みを浮かべた。それからその子は、自分のクラスと名前を言った。


「私、一年生のときからずっと、山本くんのこと好きでした」


言われることは、やっぱりそれで。
俺が言い返すことも、いつもと同じで、ごめんなとなるべく柔らかい声で返した。

その子は目にうっすらと涙を浮かべ、いいの、こっちこそ急にごめんね、と微笑んだ。


「山本くんって、今まで告白してきた子全員振ってるよね。誰か好きな子いるの?」


去り際にそう問われた。
その問いに俺はなんて答えたんだっけ。








教室に戻ればツナはいなくなっていて、煙草をふかしている獄寺にツナはどうしたのと訊けば、先生に呼ばれたらしい。
机の上には俺が朝買ったコンビニのパンと牛乳だけ置かれていて、ツナたちはもう食べ終わったみたいだ。

獄寺の正面の机に座り、牛乳をひとくち飲んだ。
獄寺は席を外していた俺にどうしたのと訊くこともなく、煙草を吸いながら空を見ていた。


「今日すっげえいい天気だよな」
「ああ」
「野球したいな」
「ふぅん」
「獄寺って野球することってないの?」
「ない」
「そっか、野球楽しいのになー」


返ってくる言葉は短かいけれど、獄寺と話すのは好きだ。
じゃあ、今度バッティングセンター行かねえ?と訊いたら絶対に嫌だと言われたから少し笑ってしまった。
そこまで野球が嫌いなのか、それとも俺か。
俺は獄寺にしかこんなこと誘わないのに。


(…あぁそっか、俺)


口が止まっていることに気づき、思い出したかのようにパンを咀嚼した。
飲み込んでから、牛乳をひとくち。
もう残りが少ないのか、ストローからズズッと音がした。


「何、さっきからジロジロ見てんじゃねーよ」
「…あ、いや、獄寺のこと好きだなぁと思って」
「…………え?」


数秒経って、顔がみるみるうちに赤くなっていく獄寺を見て思わず笑ってしまった。
あれ、そんなんだったら期待しちゃうかも、俺。

──好きだと言えば、貴方は本気にしますか?







『山本くんって、誰か好きな子いるの?』



(…いるぜ、同じクラスの銀髪の奴!)











end
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