short story

□モーニングショット
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「山本っ!起きろって言ってんだよ!」


ばふんばふん。
布団を叩く音とお腹にくる軽い重みで重たい目をゆっくりと開く。
そこには獄寺が馬乗りになっていて…って、朝からこんなオイシイ状況ありですか。


「いい加減に起きろ、今日は十代目のお宅でリボーンさんの誕生日パーティをするって言ってただろ!」
「…それは夜から、じゃなかったっけ」


夜8時に集合ね、ってツナに言われたようだったけど。
時計を見ればまだ朝の7時。
獄寺がつけたテレビからズームイン!って聞こえる。でも俺はめざまし派。
こんな朝早くに行ったって、どうしようもないんじゃないかな。


「準備手伝わなきゃいけねーだろ!ああもう、もう少し早く起きて行くつもりだったのに」


いや、早すぎ、というか獄寺はそんな早くに行ったってツナには逆に迷惑になっちまうってことを知らないのな。
つーかツナなら今の時間帯は寝てるだろう。


「ごくでらぁ」


せかせかと何やら準備している獄寺に呼びかけると、睨まれてはやく布団から出ろと言われた。
もちろん俺は早くからツナん家に行くつもりもないし、起きる気もない。
なんて口にしたら獄寺はすっげえ怒るだろうなあ。


「どうしてもツナんとこ行かなきゃなんねーの?」
「当たり前に決まってんだろ、てめえも手伝え」
「えー俺まだ眠いし」


起き上がってテレビの電源を切り、再び布団に入れば獄寺はむすっとしてまたお腹の上にどさりと座ってきた。
う、ちょっと苦しいのな。


「獄寺、つらい」
「…へえ」


それでも起きずにじっとしていたら、獄寺はひとりで行くと言い出した。
ああそれは駄目、獄寺がいなきゃ俺ここにいる意味ないし。


「ちょっと待って、獄寺」


腕を掴みぐっと引き寄せて顔を近づければ、獄寺の顔が一瞬で赤くなるのがわかった。


「マジでツナんとこ行くの?」
「そ、そう、だけどっ」


ちょっと声のトーンを下げて、耳元で囁けば取り乱す獄寺。
そんなところもすごく可愛いと思う。

俺は獄寺とふたりっきりでいたいんだけど。
と言えばさらに顔を赤らめる獄寺。
あー、やばい、俺、朝からやばい。

もうこのまま獄寺を見てたらどうにかなってしまいそうだから、嘘のあくびをひとつして目を閉じた。
すると布団がもぞもぞとして、うっすらと目を開けばとなりに獄寺が寝ていた。


「…やっぱ行くのやめた…」


まだ顔を真っ赤にしている、獄寺が本当に愛らしくてぎゅうと抱きしめた。
一瞬獄寺がびくりとしたけれど、胸に顔を寄せてきた。


「十代目に迷惑かけたくないから、昼からは絶対に行く」
「うん」
「別にてめえと一緒にいたいわけじゃないからな、俺は」
「うん、知ってる」
「…なんか眠たくなってきた」
「……俺も」


ゆっくりと目を閉じた獄寺を見てさらにきつく抱きしめた。
獄寺はうっすら目を開いて、くるしい、と言ったけれど抱きしめた腕を緩めることはしなかった。



これ以上の幸せってない。
ああ、ずっとふたりきりの時間が過ごせたらいいのに!



「なににやけてんだよ」
「しあわせだから」


ばかじゃねえの、と獄寺は言って再び目を閉じた。
その寝顔を見て、また顔が緩んでしまう。
やっぱり獄寺といっしょにいる時間って幸せだ。
その至福の中、俺もゆっくりと目を閉じた。









end
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