short story

□舞う蝶の行方は
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まるで綺麗にひらひら舞う蝶を眺めて、目で追っているみたいだ。

そのぐらい気になって、目が離せない。
獄寺の行動ひとつひとつが、俺を左右する、っていうか。


その淡い恋心に気づいたとき、はじめは、好きだから、仲良くして、それからうまくいけば付き合えたらいいな。なんてそのぐらいに思っていたけれど。
愛情、もあるけれど今ではもう、異常なまでの執着の方が大きいのだろう。


何をするにも、獄寺のことを考えて。
何をするにも、視線は獄寺のほうで。



「それから十代目が…」



帰り道、ツナと別れてからもずっと獄寺は十代目十代目とツナの話ばかりだ。
普段はあんなに眉間にシワを寄せている獄寺も、今ではすっかり笑顔で。



「獄寺ってホントにツナのこと好きなんだな」
「今更当たり前のこと言ってんじゃねーよ、十代目はすごいお人だからな」
「…それってさ、恋愛感情のほうの好き、ってこと?」



自分で質問しておきながら、答えを聞くのが怖かった。
もし獄寺が、うん、って答えたらどうしよう。



「そんなわけ」
「じゃあ俺のことはどう」
「…え」
「俺のこと。どう思う?」
「………」
「ねえ、ごくでら、」



獄寺はこのまま蝶のようにひらりと目の前から離れてしまうのかもしれない。

俺以外の誰かの傍に飛ばないでよ、俺だけにとまってほしい。



(馬鹿じゃん、俺)



そんなことをまさか思うだなんて。



(獄寺は、俺のもんじゃねーのに)



ああ、こんな気持ち、夢ならいいのに。







(……せつなくて、くるしい)









気付けば獄寺の唇に唇が触れていた。
まるで、時間が止まったみたいだった。
それと同時に一瞬だけ、恋人同士になれた気分になった。

でもその気持ちも一瞬だけ、次の瞬間にはゴスッ、と乾いた音と頬に鋭い痛み。



「…ふざけんじゃねーよ」



目の前には俯き、唇を腕で抑えている獄寺。
それからキッと睨まれ、震えた声で言い放った。




「テメェなんか、大っ嫌いだ」




走り去って行く背中をぼんやりと見つめる。
頬も、胸の奥もズキズキと痛んだ。




(なにやってんだろ…俺)




ポロポロと涙が溢れてきた。
酷いことしたのは、自分なのに。
目の前から獄寺がいなくなるのは、怖い。
明るいオレンジ色の夕日を見たら、余計に哀しくなった。


胸の中のもどかしい想いはまだ届けることが、できない。








(貴方がひらひらと舞う蝶なら、俺は甘い蜜を持った花になりたい)












end
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