short story

□このまま抜け出そうよ
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学校なんてつまらないものだと思う。
絶対将来使うことのないといえる計算式、俺には知る必要もない歴史や古文。
それにもう習わなくても大抵の勉強はできる。

俺にとって学校は十代目をお守りする為に通っている。
ただそれだけのことだった。

ちら、と十代目のほうを見ると黒板の文字をしっかりとノートに写している様子で、隣の奴と時たま楽しそうに話しているようだった。

…もしかして、十代目は俺をあまり右腕として見てくれていないのかもしれない。ってたまに思うことがある。
この前も、友達、として見てくれたときがあったし、俺は十代目の隣にいる奴と同じようなものかもしれない。
はあ、とため息をひとつ吐き、このまま授業を聞いているのもつまらないし面倒くさいから、机に顔を伏せて眠ることにした。



しばらくして授業の終わるチャイムが聞こえ、うっすらと目を開く。
休み時間だからか、周りを見れば騒ぎながら何かじゃれあっているような男子や、アハハと笑いながら楽しそうに話している女子達。

全部つまらない、くだらない。

十代目を見ればクラスメートと何やら話をしているようだった。
それを横目で見て、教室の戸を開き俺は出て行った。




教室を出れば、行く場所なんて決まってる。
帰るときに行く玄関か、煙草を吸うときに行く屋上か。




…もうひとつ。
会いたい奴がいる、保健室。






――ガラガラガラ。
戸を開けば机に向かって何か書類を書きながら煙草を吸っているシャマルがいた。


「…ハヤトか」
「……女じゃなくて悪かったな」
「…んー?確かに、残念だな」


…このスケコマシ。

でもなんだかシャマルといるときは自然と笑みがこぼれた。
さっきまでいた教室とは全然、大違いで保健室の方がリラックスもできた。
ベッドに寝ころんで目を閉じた。


「…何かあったのか」
「……別に」
「嘘だろ、テメーの顔見りゃわかんだよ」
「なんでもねーって、言ってんだろ」


いつの間にかシャマルが俺の隣に寝ころんでいたから、思いっきり胸の上に頭を乗せた。
うお、重てえ、とかいう声が聞こえたけどそんなのは無視。


「シャマルは普段何してんの」
「そりゃこーやってセンセーやってたり、あと女」
「…………ふーん」
「何、女と遊んでるからって拗ねた?」
「別に」


…まあ俺の一番はハヤトだから、なんて低い声で囁かれて頭を撫でられたら、もう。



「…なんだか疲れた」



ふうん?マフィアなんざやめればいいじゃねえか、なんて言われれば本当にマフィア、やめてもいいかもなんて思ってしまう。
…このままやめて、シャマルとふたりで暮らして。なんて。




「なあ、もう俺授業なんてかったりい、ってかもう学校がダルい」



じゃあ、ふたりで抜け出してどこかへ行くか、そんな愛しい人の声と香りに包まれて俺は瞳を閉じた。








このままどこか遠いところへ行きたい。



…だれもいない、ふたりだけの世界へ。










end
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