short story
□とある休日
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「獄寺、寿司持ってきたぜ」
最近俺は獄寺と仲が良くなった。気がする。
休みの日には獄寺の家にこうやって寿司を持って行って一緒に食べたり、たまには家に獄寺を呼んだりした。
ツナにしか向けられていなかった笑顔も、今では俺にも少しずつだけどそんな表情を見せるようになった。
そんなのが数ヶ月続いて。
たぶん、俺は少しずつ獄寺に惹かれていったのだと思う。
好きになっていた。
その気持ちに気付いて数日、獄寺の家へいつものように寿司を持っていくと、何だかいつもと雰囲気が違った。
いつもならソファに座ってテレビを見ているか、ベッドに寝転んで雑誌を読んでいるか、ベランダで煙草を吹かしているか、など限られている獄寺が、今日はベッドの上で膝の上に頭を埋めて。
泣いていた。
小さく縮こまって震えている獄寺なんて、今まで見たことがなかったから正直驚いた。
「獄寺、どうしたの」
こういうときって本当は放っておくべきなんだけど、気付いたらそう口にしていた。
だって、獄寺がなんで泣いているのか気になる。
口にしてから、しまった、と思った。
「うるせ…早くどっか行きやがれ、よ…っ」
そう答えた獄寺の声は、酷く震えた声で。
それから小さく、獄寺の鼻のすする音が聞こえた。
「…獄寺……泣いてる?」
「っ…泣いて、ねーよ」
絶対、泣いてる。
強がらなくても、全然わかるのな。
「…何か…あったの、獄寺?」
…そっとしておくべきなのに。
これ以上声を掛けたら、駄目なのに。
「ねえ、獄寺」
どうして泣いてるの?
理由を教えてよ、ねえ。
それで、俺に頼ってほしい。
…俺を、必要としてほしい。
「獄寺……」
「……っ」
そっと抱きしめた獄寺の背中は、小さくて、震えてて、でもすごく愛しくて。
抱きしめて、抱きしめ返される、なんてことはやっぱりなかったけれど。
抱きしめて、拒まれる、なんてこともなかった。
この距離が早く縮まればいいのに、これはそう思った、とある休日。
end
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友達以上、恋人未満。
そんな感じの山獄が書きたかったです。
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