short story

□寒い冬は、
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〜♪


枕元に置いてある携帯からうるさく着信音が鳴り響く。

今日はせっかくの休みなのに、心地よく寝ていたところを起こされるとイライラする。
…それに、この着信音は、山本。
チッと舌打ちして、電話に出る。
このまま電話を切ってやろうかと思ったけどあの馬鹿はそんなことをしたってまた電話をしてくるだろう。


「……もしもし」


睡眠の時間を削られて怒っています、そんないかにも不機嫌な声をしてやった。


「もしもし、ごくでら!?外見て、外!」
「……は?」
「いーから外見て!」


外見て、と何回も言ってる山本にめんどくさい、とか思いながらも薄いカーテンを開けて窓の外を見た。
窓の外に見えたのは、雪に覆われて真っ白な景色だった。


「……雪…」


ピンポンピンポン!

ぽつり、と呟いたらいきなりチャイムが鳴った。


「ごくでらごくでら!!」


…やっぱりコイツだった。
電話越しからも、玄関からもそんな声が聞こえる。
そしてばだばたと音がして、部屋の中へと入ってきた。
お邪魔しますぐらいは言ったらどうなんだ。


「獄寺、外行こ!」


布団をめくられて、ぐいぐいと腕を引っ張られて外まで無理矢理連れ出された。
子供か、コイツは。

外は寒くて、はあ、と口から出たため息が白くなった。


「…さみぃ」
「そう?俺は別にーっ」


そりゃあそうだろうな、スウェットだけの俺に比べるとすげえ厚着してんじゃねーか。
…つーか何しに外連れ出して来たんだよ…。

マンションの中へ戻ろうとしたら、野球馬鹿にぐいと腕を掴まれ止められた。


「…戻らせろ」
「やだ!…って苦しい苦しい獄寺!!」


首に巻いているマフラーをぎゅうと締め付けたら苦しそうな顔してるコイツ。
でも俺を掴む手は離そうとしない。


「だからっ!!何しに来たんだよ!……って、うわッ!?」


いきなりドンッと肩を押されて、後ろにしりもちをついた。
雪はふわふわで、痛くはなかった。


「何って、雪遊び!」


ヘラッと笑うコイツがムカついておもいっきり雪玉を顔面にぶつけてやった。
つめてえ!って笑って言ってるコイツにちょっと満足。ざまーみろ。


「じゃあこっちも仕返しな!」


ふと見たときにはもう大きな雪玉を持っている山本が目の前にいて。
ぼふん、と音を立てて雪玉を投げられた。
服の中に雪が少し入って冷たかった。


「ちくしょ、うぜー」
「ちょ、獄寺、雪玉に石入れるのはナシだって…!」
「うるせぇ!」


そんなこんなで二人で雪合戦をしてると、寒いとか、眠いとか、そんなことはなんだかどうでもよくなってきて。

いつの間にか体が温かくなっていて、ふわふわの雪の上へ寝っ転がった。
冷たい雪が気持ちいい。


「…俺さ、」
「ん?」
「雪でこんなふうに遊んだの、初めてかも」


イタリアにこんな馬鹿なこと誘って来る奴いねぇし。
はあ、と白い息を出してポツリと呟いた。


「マジで?じゃあ楽しかっただろ?雪合戦とか」
「…お前が相手じゃなかったらそうだろうな」
「わり、次は手加減するから!」



また来年も雪降ったらしようぜ、



そう言った山本に、うんと言う代わりで雪をおもいっきりぶつけてやった。








end

 

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