おだい1

□居眠りなんて 度胸あるな
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嫌いな国語の授業。
……先生の話なんて、全く耳に入ってこない。

こういうとき、俺はいつも寝たふりをして、大好きな人を見つめる。
その、大好きな人――獄寺は、窓側の席の俺から見ると、だいぶ離れている廊下側の席。
離れてるけど、俺結構目はいい方だからその姿はばっちり見える。

獄寺を見てると、当たり前かもしれないけど、いろんなことがわかる。
例えば、授業中によくメガネをかけること。
目悪いのかな、って今まで何回も思った。
…獄寺がメガネをかけるとき、クラスの女子は毎回獄寺のほうを見て、頬を赤く染める。男子もたまに。
獄寺本人は気づいてないかもしれないけど。

あとノートをとらなくていいとき、別のノートに何か一生懸命考えながら何かを書いている。
何か一生懸命考えている獄寺は、すごく可愛いな、って思う。
普段の獄寺も可愛いけど。
獄寺に何書いてるの?って聞いても教えてくれないから、ツナに聞いてみると、なにか暗号みたいなのを作ってるんだって、と言われた。
暗号なんて作らなくてもいいのに、って思うけど、なんだか獄寺らしいな、とも思った。


そのとき、ふと獄寺がこっちを向いた。
あ、ヤバい、バレたかな、と思ってすぐ目を閉じた。
そしてしばらくして目を開けると、獄寺はノートの方に目がいっていた。
ちょっと安心して再び獄寺を眺めることにした。




授業が終わったあと、ツナと話をしている獄寺の方へと向かう。
そのとき、ツナは先生に呼び出されて教室を出て行った。


「…お前さぁ」


ツナが教室を出たあと、獄寺がそう言ってきた。
…獄寺のこと見てたの、バレたかな。
と、思っていると、


「居眠りなんて、度胸あるな」
「……へ?」


と言われた。
俺はてっきり「こっち見てんじゃねーよ!」とか言われて花火を投げられると思っていたから、獄寺の予想外の言葉になんともマヌケな声を出してしまった。


「お前ただでさえ馬鹿なんだから、授業中の態度で何とかしねーと成績ヤバいんじゃねーの」
「……あぁ、そっか!」
「…てめぇ、俺がせっかく心配してやってんのに、ほんとに脳天気馬鹿だな」





俺は居眠りしてるんじゃなくて、大好きな人――獄寺を見てるんだ、っていつか言える日は来るのかな、



そう、思った。













end
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