love story

□貴方の恋人になりたいのです
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貴方のことを想いすぎて、自分が自分じゃないみたい。なんて思ってしまうことはいつものこと。

そのぐらい、貴方のことが好き。










「…ハヤト、もう授業始まってんぞ」


予鈴が鳴り響く。
静かな保健室にいるのは、俺と保健医のシャマルの、ふたりだけ。
カチ、カチ、と時計の音だけが聞こえる中、キィッと椅子が音を立てて、シャマルが俺の座っているソファの方に振り向いた。


「…しってる。腹痛ぇ」
「…お前な…毎回腹痛くなってんじゃねーか」
「オンナノコはデリケートなんです」
「はいはい」


タバコを銜えなおし再び資料に目を通すシャマルをソファに横になりながらぼんやりと眺めた。
昨日も、一昨日も、その前も。腹痛ってことでずっと保健室に通ってる。
会いたいから会いに来てる。なんてことは知っているのだろうか。


「ちょっと吸わせろよ」
「は?」
「煙草」
「…バカヤロウ。つーか腹痛ぇんじゃなかったのか?」


口からふう、と煙が出されシャマルは煙草の積み上がった灰皿に火を押し付けた。
そんな行為にさえ、目がいってしまう。


「じゃあ診ろよ」


ずい、と近寄りそう言い放つ。
ちょっと胸元強調。もともと短いスカートも、くっと上げる。
オトナの色気、そういうものを出してみたかったけれど、シャマルは相変わらずの表情のまま。
…ていうか、むしろ俺のほうが緊張してきた。
顔は近いし、なんだか手が汗ばんできた気がする。


「お前がもうちょっと大人だったら、喜んで診るのになぁ」


チラリと俺の方を見て、すぐ資料に目を通す。
ただそれだけだった。

そんなに、そんなに興味ねえのかよ。
こうやって、一生懸命頑張っているのが、なんで気付かないんだよ。


「……うるせぇ。もうお前なんか保健医クビになっちまえ」


こんな色気も何もない子供相手に、本気で構ってくれるはずない。
寝る、とだけ言ってベッドに向かおうと後ろを向いた、そのとき。
待てと低音が響き、腕を掴まれた。



「ハヤトがもう少しオトナになるまで待てって話だよ」



シャマルはそれだけ言うと手を離した。
俺はそのままベッドに向かい、カーテンを閉めた。


心臓が痛い。触れられた腕が、熱い。
好きすぎてどうにかしてる。
さっきシャマルが言った言葉の意味が、頭の中で繰り返される。
全身が熱い。




どうしよう。
どうすればいいんだろう。

オトナになるまでなんて、待てない。

今すぐ、いますぐに。
貴方の恋人に、なりたいのです。










end

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