大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!
□第9話
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サン「ワシがおそばにおりましたのは、姫さまがまだ幼少の頃でした。覚えていらっしゃらなかったのも無理はありません」
サク「三太夫さんも雪の国の人だったんですか?」
三太夫は、サクラに向かってうなずいた。
サン「さよう…先代のご主君であった風花早雪様に仕えておりました」
三太夫はそこで言葉を切ると、遠くを見る目になった。
サン「雪の国は、小さいながらも平和な国でございました。早雪様は姫様をたいそうかわいがられ、それはお幸せな日々を送っておいででした。ワシたち家臣も、その平和がいつまでも続くと思っておりました──」
そこまで言ってから、三太夫は暗い表情になり、うつむいた。
サン「しかし、十年前のあの時、早雪様の弟であったドトウめが、雪忍たちをやとって反乱を起こし、この国を乗っ取ってしまった。美しかった風花の城は焼け落ち、姫さまもお亡くなりになったものとばかり思ってました」
三太夫を見るカカシの表情は物思わしげだった。
──そう、それは十年前のこと。
炎上する風花城の照り返しのなか、カカシは犬ゾリを疾走させていた。
その犬ゾリの中には、小雪が乗っていた。
目の前で父を惨殺され、そこに駆けつけた暗部時代のカカシが小雪を助けたのだ。
小雪は泣きじゃくるが、その時のカカシには逃げる以外術がなかった。
小雪を敵の手から守るためには、なにがあろうと逃げ続けるしかなかったのだ。
サン「映画に出演されていた姫様を見つけた時、どんなにうれしかったことか…」
三太夫は、いまや人目もはばからず肩を震わせ、固く閉じた目から一筋、二筋、と涙をこぼしていた。
サン「よくぞ…よくぞ生きていてくださったと」
ユキ「あの時死んでいればよかったのよ」
醒めた声が食堂に響いた。
雪絵だった。
彼女は入り口に立って、壁に背中をあずけながら冷ややかな目で三太夫を見ていた。
サン「そんなことをおっしゃらないでください。ワシたちにとって、姫様が生きておられたことはなによりの希望だったのです」
ユキ「生きてはいるけど、心は死んでる」
雪絵は表情を変えず淡々と答えた。