大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!
□第4話
2ページ/6ページ
子「すっごーい、本物だ!」
子「風雲姫だ、風雲姫だ!」
その子供の言葉で雪絵に気付いた他の子供たちも、口々にそう言いながら近寄ってくる。
雪絵は、まわりを取り囲んだ子供たちを見回しながら、ぶっきらぼうに答えた。
ユキ「あたしは風雲姫なんかじゃないわ!」
子「知ってるよ。女優の富士風雪絵でしょ!あたしファンなの!」
その女の子はにこにこにそう言うと、肩からさげていたカバンの中をまさぐり、ノートとペンを取り出した。
子「サインちょうだい!」
子「サインサイン!」
その子の言葉が口火を切ったか、ほかの子供たちもいっせいにノートを取り出すと、無邪気な表情で雪絵に向かって差し出してくる。
雪絵は戸惑うような表情を浮かべながら、冷たい口調で言い放った。
ユキ「あたしはサインなんかしないの!」
子「そんなこと言わないで、おねがーい!」
子「サインサイン!」
子供たちが口々に叫ぶなか、こらえきれなくなったナルトも声をあげる。
ナル「俺も俺も!サインくれー!」
子「女優さんなんだから、サインくらいしてよー!」
その言葉そのものは、子供の口から出た悪気もなにもないものだったにちがいない。
だが雪絵は、その言葉に表情をこわばらせると、怒りを込めて叫んでいた。
ユキ「いいかげんにして!あたしのサインなんかもらって、何が面白いの?しばらくすれば、どうせどっか片隅に置き忘れられて、埃でもかぶってるのが関の山でしょ!」
その瞬間、子供たちの顔からは笑顔が消えていた。
しばらく見回した後、子供たちの間を抜け、雪絵は歩き出した。
ユキ「なんの役にも立たない、くだらないものじゃない…バカみたい」
つぶやいたその言葉は、子供たちにといいよりも…自分に向けて言ったかのようだった。
雪絵は逃げ出すように足を速めると、その場を立ち去っていった。
いつの間にか集まっていたやじ馬たちが、声を潜めてささやきあう。
女「やあねえ、気取っちゃって」
女「なんか幻滅」
男「ちょっと売れてるからって、テングになってるんじゃねぇの?」
その声を背中を向けて聞きながら、ナルトは離れていく雪絵の背中を、ただただ見送るのだった。