BOOK1

□高杉
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そもそも、何の話だったんだろうか


「…どこ行くんだよ」

『浮気してくる』

「は?」

『晋助のアホさ加減にムカついた。浮気してくる』

「ハァ?」

『そこら辺歩いてれば一人や二人声掛けてくるでしょ。浮気してくる』

「ハァ?!」

『適当に一晩イケない夜過ごしてくる。じゃあね』

「…はー」

『…何?それってため息?深呼吸?それとも疑問符?』

「かめはめ波。」

『ああそう頑張って。晋助なんかに出せる訳ないとは思うけど。じゃあね』

「いやいやいや待て待て待て」

『…何?それってひきとめたいの待て?それとも反論がある故の待て?』

「両方」

『あらそう。で?何?』


なんでいつもこう
この女ときたら


「…つーかなんでお前っていつもそんな言い方がくどい訳?つーか屁理屈?」

『あら あたしのどこが屁理屈?あたしからしてみればそれって唯の負け惜しみって風にしかとれないんだけど。ねぇどの辺?』

「………」

『あら 反論無し?じゃああたしの方が正論って事で異議無し?』

「………」

『じゃあ、そういう事ね。それじゃ』




「待て」

『なぁに?』

「居ろ。此所に」

『どうして?』

「お前に居て欲しいから」

『そう。いいわよ』


…そう言ってソファに座る。
コイツはいつもこんな風だ。

(三年経っといて今更だけど)訳わかんねえ女。


憎たらしい程にぐだぐだごねたかと思えば、あっけない程に俺の言葉に簡単に従う。

何も無かったかの様に、平然と。



一息ついてふと出た何気ない俺の一言、


「…可愛くねえ女」



たった、それだけ。
たったその一言で、



コイツが泣いた。




ぴくりと肩が跳ねた後、
嘘みたいに コイツが


泣いた。


嘘みたいにボロボロ落ちて染みてく滴。



……嘘、だろ?
…だって誰、だ?


この、俺の前に居る

弱いヤツ。


まるで

唯の女みてぇな。


これじゃまるっきり

唯の可愛い女じゃねーか

唯のか弱い女じゃねーか

守ってやらなきゃならねぇ


女じゃねーか




思わず出た、



「…や、つーか 嘘 っつーか」


の一言。



で。


この女は



パラパラと、雑誌を読み出した。



……いやいやいや


涼しい顔して読んでんじゃねーよ
活字じゃなくて空気読めこのクソ女。
このちょっと申し訳なさげに
萎んだ俺の感情をどうしてくれる



「オイ」

『なに?』

「好きだぜ ボケ女」

『あたしもよ バカ男』



どうしてくれる



「今なら出そう」

『何が?』

「かめはめ波」

『晋助には、無理』

「んだとコラ」

『あたしには出せるけど』

「上等。出してみろよ」







出せるよ!ラブビーム!!




(うお マジだすげぇ
すげぇ電波発言
お前マジで頭大丈夫か)

(アンタこそイカれた左目でしょーが)

(これはアレだ。ここから。うん
ここから俺もラブビーム出るから)

(うわっ 晋助電波!)

(うっせー お前にしか
当ててやんねーかんな)

(上等!)



白昼堂々キスしよう!

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