BOOK1
□一護
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肩くらいの薄い茶の髪にやたら白い肌とでかい瞳の転校生。
他の組の男連中に囲まれてしつこく携帯番号を聞かれているのを幾度か見かけた。
ケイゴの誘いを断って一人で家に帰る途中にもそんな場面に出くわした。
いかにもタチの悪そうな服装の男に絡まれていて、あまり関わりたくは無いがさすがに無視するわけにもいかなかった。
「どうもありがとう、助かった…。ええ、と」
「黒崎。」
「…ありがとう!黒崎君」
転校してきて一か月近く経ってはいたが俺の名前はまだ認識されていなかったらしい。
別にどうでもいい事だけど。
それ以来、
「ねぇねぇ黒崎君」
この女は俺の前によくよく現れる。
気づけば机の前に立っている。
「どうして黒崎君ってクロサキ君なのに頭オレンジなの?」
そんなもの、知るか。
俺は生まれた時から黒崎で、
生まれついてのこの髪色だ。
「ねぇねぇ黒崎君」
相変わらず囲まれてはいるようだがそこからスルリと抜けて俺の所にやってきては妙な質問ばかりしてくる。
周りの奴らの恨めしそうな視線(主にケイゴ)が痛い。俺が何をした。
「黒崎君って妹さん居るんだってね!」
どこからそういう情報仕入れたんだ。
「メロンちゃんとスイカちゃんって本当?!」
凄いね!って、本当どこから仕込まれたんだ。そして信じるのかこの女は。
そしてつい三日前。
何の因果か、席替えでこの女と隣になってしまった。ベタか、俺は。
周りの視線(主にケイゴ)はますます強まる。
「ねぇねぇ黒崎君」
ふと気付くとこの女が机の前に現れて驚かされる、という事は無くなった。だがしかし隣を向けばいつでもこの女の姿がある。
お陰で俺は、
右側を向く事が出来なくなってしまった。
時折授業中に視線を感じる。
その数分後、この女の口が開く。
「どうして黒崎君って眉間にしわ寄せてるの?」
どうして、と聞かれても。
「…この問題、難しい、とか?…いやでも黒崎君って頭良いもんね」
数学の教科書と俺を見比べている様だ。
俺は左の窓と、数字の並ぶ黒板に交互に視線を移す。
うーん、と唸ってから、
「分かった!お腹痛いんでしょ?大丈夫?」
…毎度毎度、この女は俺の事をおちょくっているとしか思えない。
お前こそ頭は大丈夫か、
と返してやろうかと振り向いた。
白い白い、
細い指が伸びてきた。
伸びてきて、
俺の額に触れた。
「熱、無いね」
毎日を無駄遣いしている
腹痛いか聞いてきてなんで熱測るんだとかこの問題がわかんねーわけでもねえよとか授業中だろとかお前ノート取れよとか色々突っ込みたい事があり過ぎて面倒臭くなってとりあえずこの額に添えられた白くて小さな手を、握った。
一護は押しに弱いといいな