BOOK1

□獄寺
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目の前の女は、

俺ではない男の名を挙げて、
そいつが好きだと言った。


そいつを嫌う俺は、

その名を聞いただけで不愉快になった。

好きな女に好きな男が居た。
しかもよりによってあの男ときたもんだ。

何一つ面白い事なんてあるはずもなく、むしろどん底で、最悪な気分だった。



どうしてこうも現実は面倒臭いのだろうか。上手くいかないものだろうか。


この間見た夢では、この後の展開としてはこうだった。

彼女も俺が好きだと言ってきて、
俺が抱き締めたら彼女からのキス。
ひつこく激しいベロチューをした後、「あたしを好きにして」と潤んだ瞳で俺の手を取り胸に押し当てる。
押し倒して下着を剥ぎ取ってあとはもう本能のまま好きにする俺に「好きよ」と繰り返す彼女を延々と堪能する。


というなんとも順調過ぎて、読者や視聴者からブーブー言われそうなくだらないご都合的作品的展開だったはずだ。


それなのに なんだコレは。


この女は あの男が好きだって?



ああ可笑しい
可笑し過ぎて頭が痛い。


頭が痛い。

なんだかもう何も考えるのが面倒臭い。
目を瞑れば今にも倒れ込みそうだ。


ああそうしよう。


このまま倒れこめば俺の身体は彼女の身体に密着するだろう。

そしてそのまま抱き締めて、
キスをする。
ひつこく激しいベロチューをした後、「あたしを好きにして」と潤んだ瞳で俺の手を取り胸に押し当ててくるだろうから、
押し倒して下着を剥ぎ取ってあとはもう本能のまま好きにする。俺に「好きよ」と繰り返す彼女を延々と堪能する。そうだ。きっとそうなる。そうなるに違いない。





世界なら明日終わるよ




(だって今日、俺はキミに)



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