Ci vediamo夢主×土方歳三

『…はぁ』

雪解けの始まった三月半ば
まだまだ寒い日も続いてるけど、真冬の時に比べたら大分マシになってきたかなって、感じだ

今日みたいに、晴れてる日だったらお昼は日向ぼっこでもすれば結構暖かい

と、言うことで絶賛日向ぼっこ中

最近の言葉を使えば、日向ぼっこなう、だ←

『んー、にしてもここ(新撰組の屯所)の縁側からみる庭は大したもんだねー』

特に庭師が居るわけでもないのに案外手入れがされている
きっと近藤さんとか山南さん辺りがこまめに手入れでもしてるんだろうーなー



『…お、梅だ』

三月の半ばとなればそろそろ梅の見頃だったっけ
あんま花とかに興味ないから正確なことは分かんないけど

『まあ、咲き始めたってことはそろそろ見頃なんだろーね』

梅が咲いたら次は桜だったような
と、いうことはお花見かね

アユ姉のご飯でも持って皆でどんちゃん騒ぎなんかして

今から楽しみで、ついつい口角が上がってきちゃうわ

『なんて、ね。』


こんな毎日に次第に馴染んでいる自分が居る

きっと昔の自分だったらあり得ないだろうけど
悪くない、なーんて思ったり思わなかったり


思い老けてると、部屋の中から声がした
あ、ちなみに今は土方さんの部屋の前に居る
何故かと言うと彼の部屋の前が一番日の当たりがいいからである

まあ、彼の自室なので、おそらく土方さんが何やらブツブツと独り言を言っている

え、何あの人怖いんですけど
元々怖いけど、なんか違う怖さを発見したんですけど


「…花…、いや…?…だ…か。」
『…?』


聞き取れそうで聞き取れない!


「梅…、赤い…、…?」
『(梅の花?)』


ああ、土方さんもあの庭の梅の木でも見たのだろうか
でも一体何をブツブツ言うんだ…?


もう気になって気になって仕方ない私は気配を消して障子にずッと、近づいた


「梅の花、赤い花咲く…、いや、ちげーな。」
『(読書でもしてんのか?)』


字が読めなくてブツブツ言ってんの?あの人



「梅の花、一輪だけでも、…あぁ繋がんねェ」
『(??)』


繋がる?
え、LTE??



「梅の花、一輪咲いても、…」
『(ん?この読み合わせって…)』



ま、まさか




「梅の花、一輪咲いても、梅は梅」
『ぶっ』
「!?」



ガラッ!!


「てめェ…っ!」
『ぶはっ!つい耐えきれなくて…』


腹痛ェっ!
え、嘘でしょあの顔つきで俳句読んじゃうの?
あの顔つきでかましちゃったよ、この人

ってか、


『俳句読むの下手くそか』
「聞いてやがったか、くそッ…」


一番厄介な奴に聞かれちまったって、人聞き悪いな、オイ


『でも、まあ、いいんじゃないかな、土方さんが、俳句よんでたって、ぶ』
「笑ながら言うことじゃねーよ」


煙管を吹かしながら、頭をガシガシかくのは彼の癖だろう


ふーっ、と口から吐き出される紫煙が青空に消えていく
口から出た時はあんなに白い煙だったのに、いつの間にか空に馴染む透明へと変わっていく
そして、その煙は静かに、知らぬ間に消えていく


その有様は、まるで、


『私の様だ』
「…あ?」


土方さんの視線が私に向く


『昔の私と今の私は、全く違う。そして、いつか今の私と未来の私も全く違うものになるのだろう。』


それって、良いことなのかな、悪いことなのかな


澄み切った青空を見上げながら、彼の顔を見ないで言ってみた
彼の顔を見れないのは、彼がどんな顔をしているのか見たくないから
呆れ顔?それとも怒った顔?何言ってんだ、こいつ的な感じの顔?
どんな顔付きでもいい
問題は顔ではないのだ



私が、怖いのはーー…





「梅の花 一輪咲いても 梅は梅」
『は?』
「この句は、てめェにやる」
『え、俳句の贈り物なんてされたことないわ』
「うるせェ、やるってんだから黙って受け取っとけ」


俺は忙しいんだ、なんて言い捨てて彼はまた自室へと戻って行った


『…ふふ、』


縁側に一人取り残された私だったけど、すこぶる機嫌が良い


『はぁー…、年下に救われちゃったかー!』


きっと部屋の中にまで聞こているだろう
正面切って言えないから、これでいい


私が怖かったのは、


『ありがとう、土方さん』



彼から発せられる言葉だったのだ

きっと私は遠い未来、いや、近い未来かもしれない
でも、いつか、ここからいなくなる存在なのである
生きている人間のように年を取るわけじゃない
彼らと未来を共に生きていくわけじゃない
彼らには彼らの道が、私には私の道があるのだ

私たちは生きる道が違うのだ


そんなこと、分かってる
始めからここに来た時から分かってる


でも、案外、わたしはここを、新撰組を気に入っているらしい


だから、新撰組の幹部である土方さんに、知らねぇよって、切り捨てられるのが怖かったんだ


とんだ小心者に成り下がったもんだ


ガラッ!


『あれ、土方さん?』

忙しいんじゃなかったんですか?

「てめェはへらへらしてるし、何考えてるか分からねぇし、正直関わりたくもねぇ」
『え、うそうそ。ここにきて心に刺さる言葉の数々…』
「死神とか訳わかんねぇことばっか言いやがるし、変な刀ぶら下げてやがる」
『死神なんだもん!ってか、黒蝶のことまだ根に持ってる!?』

「だが、」



「別にここのやつはてめェのこと嫌いじゃねぇ」
『…うん。そっかぁ…。』


だから下らねェこと考えんじゃねぇよ、馬鹿


頭をガシガシとされる
ちょっと乱暴だけど、どこか優しさを感じるこの大きな手から伝わる温もり


『あたし、意外と土方さんのこと、好きかも』
「…そいつァ、良かった」


俺は忙しいんだって言ってまた自室に帰って行った土方さん
最後の一言は照れ隠しってことは


『二人の秘密、ですね』



さぁって、今日も一日頑張りますか!














梅の花 一輪咲いても 梅は梅



キミはいつだって、どこにいたって、キミはキミ





2014.05.01


Thank you!!



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