クラップ

□大空さんと
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「いらっしゃいませ」
ニコリと笑いもせず、でも接客はあくまで丁寧だ。


「今日はどういう風にしたいの?」
椅子に座ると鏡に私が写る。


「わかんない…まかせる」
私が少しめんどくさそうにいうと、
「わかった。じゃ、スキンヘッドにしちゃってもいいんだ?」
意地悪くニヤリと笑う。


「ユウヒさんの意地悪…」
恨めしそうにみてやった。

「ほら、可愛くなりにきたんでしょ?」
そういって、雑誌をいくつか持ってきてくれた。


「んー」
私が悩んでると、さりげなく提案してくれる。
口ではいつも意地悪言うけどユウヒさんって結構優しいんだよね。


「じゃ、こういう感じで。きっと似合うよ」
ユウヒさんが提案してくれるおかげで面倒くさがりの私もなんとか女の子らしくいられるんだとおもう。



シャンプーして
カットして
カラーして…

みるみる私が変わっていく。ユウヒさんの手、髪に触れられると気持ちいいな。

「眠い?」


「大丈夫…で…す」
二人きりの美容室ってなんだか緊張しちゃうな。


「…。」
ユウヒさんが無言で優しく髪を撫でるからなんだかくすぐったくて。


「ユウヒさん?」
振り返ってユウヒさんを見ようとした。
「だめだよ。」
でもユウヒさんがそれを許してくれなかった。


鏡越しにお互い目があう。

…そらせない。


ユウヒさんは満足そうにニヤリと笑うと少しかがんで「好きなんだ」

耳元で低く囁いた。
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