クラップ

□水さんと…
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「花魁(おいらん)、夏希様がおまちですよ。」


「…わっちは行きたくありんせん」
ぷいっとそっぽを向く。


「そんなこと言わずに。お願いしますよー」
これは困ったという風にオロオロしている。ここでこの人に当たるのは少しだけ可哀想かなと思いなおし、すっくと立ち上がる。


「鈴、そこのクシもって、わっちについてきなんし」近くにいた禿(かむろ)に声をかける。


禿をしたがえて、チカさんの居るお部屋へ向かう。


「夏希様、お待たせいたしました。花魁がお見えになりましたよ」
それでは、と、男は頭を下げてさがっていった。


ふすまを開けるとチカさんが座っていた。
「今日も綺麗だね。」
にっこりと私に笑いかける。


「…。鈴、持ってきたクシを夏希様ににお返しして」禿がチカさんにくしをわたす。



チカさんは少しだけびっくりしてまたいつものクールな顔にもどる。
「これはどういうことかな?」チカさんが静かに私に問いかける。


「わっちは…夏希様が嫌いになりんした」
ぷいっとそっぽをむく。


「…そうか。」
座っていたチカさんが私に近付き側に座る。
「それならキチンと私の目を見ていいなさい」


「わっち…は、チカさんが…」チカさんのまっすぐな目を見ていられなくて目を、顔を伏せる。


「嫌いになったんだろ?ほら、ちゃんと目を見て」
あごをとり伏せた顔を上げられる。


「目を見て言えないなら、却下だな。君が私を嫌いでも、私は離してやらないよ」
そういって、チカさんは強引に私の唇を奪った。
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