11/14の日記

21:43
分裂したモノは淘汰され一つになる。
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知らず知らず自分自身の感情を殺していた。
それがどういう事になるかも知らずに。



目の前の自分の姿をした死体におののきながらやっとのことで立っている。
妙なほど傷一つないその死体は本当に死んでいるのかと疑うほど安らかだ。
しかしそうすると此処に立っている自分は誰なのだろうか?

“根岸 崇一”

そう呼ばれていたはずだ。
だとしたら目の前の‘根岸 崇一’は誰なのだろうか。
重く感じる手を持ち上げると、ある意味見慣れた特徴のある白い手に黒い爪。
頭のなかで警報がなる。

考えてはいけない。と。

ガクリと首を前に傾げると金髪が視界に入る。
そして見慣れた衣装。

考えるまでもない。

でもクラウザーは根岸だし、根岸がクラウザーになっているはずなのだ。

自分はクラウザーなのだろうか。

しかし自分は‘根岸 崇一’と認識している。

膝が震え胃に何か得体のしれないモノが暴れまわっている感覚に、冷や汗が出てくる。
吐き気がしてきて手で口を押さえる。

今ここで座り込んだら立ち上がれなくなりそうだ。

そういえばドコに居るのだろうか。
一面グレーの砂漠のような所にいることしかわからず、何時の間に来たのかも記憶にない。

しかし砂漠ならこんなに平面な風景ではないだろう。
何時までも此処に居るのもはばかれてゆっくりとデタラメな方向に歩き始める。

随分歩いた気がするが風景が変わらず移動した気にならない。
立ち止まりふと足元を見ると口に酸っぱい味が広がり胃液が逆流してきた。
体を二つに折り吐くモノが無くなっても吐き気は治まらず涙がにじむ。

先ほどと変わらない‘根岸 崇一’の死体が目の前にある。

ついに立っていられなくなり膝を着く。

目の前の死体と思っていたモノがゆっくりと動き出した。
目が開き手首をゆるく掴まれる。
ヒヤリとした感覚に背筋が凍る。
鼓動が感じられない。

叫ぶことも動くことも出来ずに、体も心も機能を止めてしまったようだ。

『君が僕を殺してしまったんだよ』

‘根岸 崇一’がどこかぼんやりした様子で語りかけてきた。

『もう、クラウザーとしてしか生きられない』

根岸に手首を掴まれているクラウザーは弱々しく頭を振る。

「イヤだ、僕は、クラウザーになんて、なりたくない」

クラウザーは震える声で呟く。

『もう僕が最後の一人なんだ』

根岸がそう囁くとクラウザーの手首を掴んでいた手がサラリとグレーの砂になり崩れ落ちた。

『ああ、もうギターが弾けないね』

持ち上げだ腕が肘まで砂になり落ちる。
そして砂漠の砂と同化してしまう。

もし、 この砂全てが‘根岸 崇一’の 成れの果てだとしたら。

足元から這い上がってくる恐怖に似た感情に頭の中が真っ白になってくる。

サラサラと音を立て目の前の‘根岸 崇一’が砂になっていく。

原型を留めなくなるとクラウザーは一粒だけ涙を零す。

クラウザーの心情を表すような荒唐無稽な風景が広がる中、冷めきった表情でそこに佇む悪魔の姿があった。





おわり。









なにかを間違えた根岸くんのクラウザーさん化。
悪魔設定というわけでもなく、心情のみの話。
裏サイトに載せるか此処で良いのか悩んだ結果、結局こっちに。
『妄想遊戯』を書いてる時に浮かんだネタだったから。
本編には入れられないからSSで読み切り仕様。

もっと暗く書いたら裏いきでした。

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