07/07の日記
07:51
七夕
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妄想遊戯の番外編のような話。
ようするにクラウザーさんの姿から根岸くんに戻れなくなったということ前提でよろしくお願いします。
『もとに戻れますように』
根岸ことクラウザーはコッソリ短冊に願いをしたため、竹が無かったので観葉植物に括り付けた。
今年もまた七夕の日は雨らしい。
(恋人同士なのに一年に一日しか会えないなんて可哀想だな。)
(だから雨で逢瀬を見られないようにしてたりして。)
なんてロマンチックに考えていたりする。
すっかり出不精になってしまったクラウザーは、デカいソファーの端っこに座り今日一日のオフをどうするか考えてみた。
自分がどんなに変装して出掛けても百発百中騒ぎになるのだ。
さすがに出掛ける気分にならなくなるほどに。
(そういえば相川さんとどのくらい会ってないのかな、七夕の奇跡とか起こらないかな。)
などとウダウダ考えていたりする。
社長がいればクラウザーが声に出さずとも天性の感で素晴らしいツッコミが入っただろうが、残念ながら此処にいないので比較的のんびり自分の妄想に浸っていられる。
何とはなしに七夕ソングをイメージしてみたりする。
相変わらずベタベタのlove songを考えたりしつつ時間を潰してみたが、どうも気が乗らない。
そわそわと落ち着かず手を組んだり脚を組み替えてみたりせわしない。
いやな予感がするのだ。
「やっぱり出かけようかな?」
クラウザーが声に出して呟いた瞬間、来客を知らせるチャイムが鳴った。
ビクリと大袈裟に反応すると諦めたようにドアに向かった。
「遅いわよクラウザー!」
クラウザーの予想違わず社長がいた。
グリとグラの後ろに和田と西田もいる。
ガクリと肩を落とすと中へ通すために道を空けた。
(短冊外しておいて良かった。)
軽く冷や汗をかきながら内心胸を撫で下ろした。
「今日は七夕パーティーよ」
何かにつけて集まり宴会をする社長達にウンザリしたが、クラウザーは諦めの様子で状況を見守った。
手頃な笹も用意されている。
「じゃあコレに野望を書きなさい」
短冊を手渡そうとした社長はクラウザーのポケットに無造作に突っ込まれている紙をめざとく見つけた。
クラウザーがあっと思った時は既に遅く社長の手の内にある。
・・・終わった・・・
クラウザーは信じることを止めた神様に思わず祈りを捧げた。
祈っても無駄なのにまだ信じているようだ。
「クラウザー、コレは何だ?」
「あ、いや。その・・・」
「ここまで目をかけてやって、まだ諦めて無かったのか」
クラウザーは周りを見回したがもちろんグラとグラはクスクス笑っているだけだし、西田は我関せずで既に食べ始めている。
和田は頑張れ俺には無理だと片手を上げ謝るジェスチャーをしていた。
なにか言い訳を考えないと。
クラウザーが必死で言い訳を考えていると、沈黙を肯定と受け取った社長のキレイな延髄蹴りが決まった。
クラウザーは薄れゆく意識の中でそういえば今日は仏滅だったなとぼんやり思い出した。
「クラウザーのままでいれるよう書き直しておいてやるよ」
社長は顔にかかった髪を払い、旨そうに煙草の煙りを吹き出してニヤリと笑った。
おわり。
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