クレヨン日和(オリジナル小説)

□第一章 ちっぽけな大人
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ベンチに座って、噴水をぼーっと眺めていると、子どものキャッキャという笑い声が聞こえてきた。

水がかかったというだけであんなに喜べる。そりゃあ毎日楽しいだろう。もちろんいいことばっかりではない。だけど、大人になったらこんな退屈な日常が待っているなんて、あの子は想像もしていないんだろう。

それとも、こんなに退屈な大人は自分だけなのだろうか。

ごめん、と思う。

何がだろう。きっと、昔の自分に対してだ。

こんな未来でごめん。小説家になりたいと思ったこともあったけど、働きながら書こうと思っていたけれど、仕事で疲れてしまって、文章を書く気になれないんだ。

活き活きと水の噴き出す噴水が昔の自分だとしたら、今の自分は枯れてしまった泉だ。

希望という名の水はもうない。辛うじて、その存在を覚えているにすぎない。
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