素直になれない(オリジナル小説)
□第一章 素直になれない
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「まあ……お二人とも、今のお姿からは考えられないくらい、素直な素質をお持ちだったんですねえ……いつのまに無くしてしまったんでしょう」
そんな哀れみの籠もった眼差しで見なくたって。
「根本をたどれば、もしかしたら……」
根本ねえ。……たしか、小学生の時は既にどつきどつかれ生きていた気がする。
両者共に、黙秘。
の、状態が30分続いたところで……
ムジナさんが溜め息をついた。
「占いですから、できることはここまでですね……」
アオはこめかみにじぶんの手のひらをあてた。
「何とかしてよ、ホント」
(おまじないが、あるんですよ……)
カイトが退出したあと、引き留められた時のムジナ先輩の言葉をふと思いだす。
(このカメラで、一番大切な人にあなたの写真を撮って貰うのです)
(「そうすると、どうなるの?」)
(「何が起こるかは、おたのしみ。ふふふ……」)
「……まさかね」
事態が好転するとは思えない。
「やーめたっと」
いちおー借りてきたカメラを置いて、荷物を取りにロッカールームへ戻った。