旧・Treasure
□稀白灰音様より
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甘い香りに誘われて
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「なぁ…市丸、何食べてんだ?」
時間は夜、月明かりの下。場所は市丸の部屋の縁側。休暇をうまい具合に合わせて、久しぶりに会えた日番谷と市丸は、二人縁側に座りくつろいでいた
まぁ、誰かさんは毎日仕事ほったらかしで十番隊へ遊びにいっているんだから、久しぶりというのは"二人っきりで"という意味でしかないのだが…
「ん、これか?なんに見える?」
舌をペロッとだしたそのさきにあったのは赤い赤い小さな飴。苺かなんかだろう、赤い飴をずっと舐めていたからか市丸の舌は赤くなっていた
時間が時間だ。何故か市丸が色っぽく見える、気のせい…だよな、気のせいだと思いたい
舌を出すその仕草にまでドキドキしてしまうなんて‥
「それ、うまいのか?」
「食べてみたいん?」
食べたいか食べたくないかと聞かれたら、まぁ食べたいになるだろう。食事をとってからもう何時間も経っている。少しは腹も減るはずだしな
だからと言って人の食べ物をもらうわけにもいかないだろ。お前と違って俺は遠慮という言葉の一つや二つ、知ってるんだから
「その飴あといくつあるんだ?」
「これしかないんよ、それでもえぇ?」
「意味わかんね、それしかない飴をどうやって俺が食べるんだよ」
冗談もほどほどにしてほしい、一つしかない飴をどうやって食べるんだ。一つを二つに増やすのか?魔女でもねぇしそんなことできっこない
ニヤッと笑う市丸を見て背筋が凍るような感覚、いわゆる"悪寒"というやつがした。嫌な予感が‥
「冬…目、閉じて?飴あげる」
何かしでかす気だな、頼むから身体に悪いことだけはしないでくれよ?俺はお前と違って明日仕事なんだから
そんなこと思っていながらも素直に目を閉じる日番谷、やっぱり市丸のことが好きなんだと分かる。好きな奴の言うことに従うのが恋をしてしまった証
日番谷が目を閉じた瞬間、市丸はそっと顔を近づけてキスをした
舌をつかい先ほどまで舐めていた飴を日番谷の口の中に入れてやる、これが市丸流の飴のあげ方
いきなり口に何かをいれられて驚いた日番谷はすぐに口を離した
「飴…美味しい?」
うるせぇよと赤い顔をして小さく呟く、舌を動かすとほんのり甘い味がした。しかし、市丸の口内に長いこといた飴はすぐに形を無くしとけていった
「舐め終わったん?」
「もともと小さかったんだよ」
「なら、もう一個舐めへん?」
懐に手を入れて飴をとりだす、こいつの服の中はいったいどうなってやがる
クシャクシャと包み紙を開けて中身を取り出す。今度は綺麗な青色、月明かりにあたると緑色にも見える
返事がないのを肯定ととったか、市丸は嬉しそうに飴を口に含んで日番谷を見つめる
「お口…開けてや?」
またもや素直に口を開けてしまう日番谷、同じ事が繰り返すとわかっているのに
次はキスではすまないかもしれないが、もうそんなことを考える余裕などなかった
甘い香りに誘われて
(市丸の誘惑にまんまとひっかかっちまったな)