1stSS

□BirthDay-2011-
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中学3年生の冬だったと思う

雪が舞う公園で私と彼女は初めて出会う事になる




…ーそれは初恋のはなしー…





その日は冬休み直前で、学校は短縮授業で昼頃には帰宅できた


軽く食事を済ませてから自宅から5分程行った所にある小さな公園

遊具は基本的なものが揃っている


小学生の時からこう言った場所で遊ぶ事がなかった…

それは今も同じで、公園に来たのはここで遊ぶ為ではなかった


小学生の低学年の頃から付き合いのある"益田義人"から毎度の如く強引に誘われ、待ち合わせ場所に指定してくるのがこの公園の入り口であったからだ


学校の中で話すクラスメイトは何人かいるが、友人と呼べるのは益田くらいなものだ


益田からの誘いに迷惑だと言いつつも、密かにその騒がしさが心地良くもある

腕時計を確認すると予定時刻の10分前だった

益田が約束の時間を守る事は滅多にない、今日も10分程の遅刻は覚悟の上だ

待ち時間を無駄にしない為に鞄には常に単語帳や読みかけの本が入っている


入口付近のベンチに腰掛けて、単語帳を捲って行く


10分くらい経った所で腕時計の針は待ち合わせた時刻を指している


「やはり、あいつは来ないのか…」


いつもの事とは言え溜息を漏らす


今日は朝から一段と寒くて、動かさなかった体の間接が悲鳴を上げる


一度ベンチから腰を上げ軽く伸びをしてからもう一度座り直す


雲の間からチラチラと小さな雪が舞う

「どうりで寒い訳だな…」

空に向かって一人事を零す

冷えた指に温かな息をかけ、改めて単語帳の続きを見ようと捲ると、隣から覗き込んだ小さな頭があった



「え…」

慌てて隣に目を向けると小さな女の子が単語帳に目を向けて興味深く覗き込んでいる



「お兄ちゃん、これどんなお話なの?」


突然投げられた質問に何て答えたらいいのかわからずにしどろもどろになりつつも、「これは物語ではなく、勉強をするための道具」だと言う事を伝える


「なーんだ」

さも気にした様子もなく興味なさそうにベンチを降りると「お兄ちゃん、またね」と手を振り去って行く


4歳くらいだろうか、普段関わることのない子どもの相手は少し緊張した

自分は人に対しての気遣いが上手い方ではなく、時にその言葉で人を傷つける事がある


対象的に益田は人との付き合いが上手く子どもの相手も難なくこなすだろう


「わりー、零一」

5分以上遅刻しておいて悪びれた様子もなく手を振りつつ駆け寄ってくる


「悪いと思っているなら、自分で言いだした時間くらい守れ」


単語帳を鞄にしまいつつ移動の準備をする


「だいたい、今日は受験勉強がしたいというからわざわざ付きあってやると言ったんだ…」

盛大に溜息を吐いてから図書館へと移動を始める



益田と話している内に、先程の少女の事は忘れてしまっていた




しかしながら小さな彼女と私との奇妙な関係はすでに始まっていた


その事を理解したのは数週間たった頃だった




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