1stSS

□ホワイトデーSS-2011-
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2月
本日は朝から男女共にそわそわとして落ち着きがなかった
その理由は、明確である


今日は14日、バレンタインデーだからだ



帰りのホームルームの前に理事長に呼び止められ三年生担任に1枚のプリントを手渡された



内容に目を通して静かに溜息を漏らした


そのプリントの一番上には大きな文字で「卒業制作」と書かれている

今は2月の中旬、時期で言えば遅すぎるその言葉に受験まで1週間程しかない今、何故彼女達はこの様な企画をしたのか・・・

その理由は発表内容の欄に目を通した際に明らかになる。


:企画内容:

日頃の感謝を込めてバレンタインのチョコレートを配る

料理部、手芸部によるバレンタインチョコ、ラッピング
家庭科室での展示


:企画代表:

東雲 澪


代表者の名前は自身の担当しているクラスの生徒の氏名が書かれている

今年の10月の文化祭を最後に引退していたはずだが、それからもの部活動を続けていた様で受験勉強の合間によく家庭科室に入って行くのを目にしている

家庭科室のとなりには調理室があり、日頃から家庭科室を部室としている手芸部と調理室を部室としている料理部は仲が良かった


彼女の成績ならば、一流大学といえど、余裕で通過出来る…しかしながら、志望校の偏差値がギリギリな生徒の名前も数名確認出来る


肩の力を抜き、すでに理事長の許可を貰っているのでは今更に注意しても遅いと判断し、ホームルームの為に職員室を後にした



落ち着きがないのは生徒だけではない……

不本意ではあるものの、担任である氷室 零一…彼自身が朝からいつもの冷静差を欠いていた

それと言うのも、さらに不本意ではあるが担当クラスの彼女…東雲 澪に想いを寄せていると自覚してしまっているからだと言う事に他ならない

彼女がこの企画を考えた理由も見当がつく

毎年贈られているチョコレートを職員室にあるチョコ受付箱に入れる用に促して、直接それを受け取ることがなかったからだろう

この企画ならば、理事長の許可が下りて居る以上受付箱へ誘導する必要はない

生徒であり想い人である彼女からのチョコレートを直接受け取れる事へ少しの気持ちが高揚している

その気持ちを落ち着かせる為に咳払いを一つ落とす


この気持ちは誰にも悟られてはいけない

卒業目前のこの時期に彼女に迷惑をかける訳にはいかない


彼女の気持ちが自身へ向けられている可能性は極めて高い
バレンタイン・課外授業・修学旅行

何かイベントがある度にことある事に零一の元へ来る

同級生からの誘いを断ってまで零一を誘いに来た事もあった


だからこそ、この気持ちは今誰に知られてもならない、それが彼女を傷つける事になっても、彼女の将来を想い他生徒と同じように接する様に勤めていた



これはどうあってもチョコを受け取って貰うと言う彼女の意思なのだろう


苦笑した後、表情を固くし教室へと入っていった







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