1stSS

□バレンタインSS-2011-
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先生と私の前には見えない壁があって、きっとその壁は私が卒業してもそこに在り続けるのだと思う


卒業を目前に控えた2月の初旬…一流大学への受験も目前のこの季節にこんな事をしている時間なんてない事くらい解っているけれど…


どうしても、このイベントだけは乗り越えておきたい

週明けは女の子の戦場バレンタインデーなのだから




長机を囲む様に数名の女子が着席していた、黒板には大きく「卒業制作」と書かれている

教卓に手を着いた形で「では卒業制作は『日頃の感謝を込めてバレンタインのチョコレートを配る』で異議ありませんか?」と問いかける


声を揃えて「異議なし」と返ってきた



提出用プリントの制作内容欄に先程の言葉を書き加え
料理部、手芸部合同バレンタインチョコの制作発表と記入する


先生との壁がそこにあるのならば、生徒らしいやり方で無理やりにでも受けとって貰えばいい


手芸部元部長の肩書を少し利用させて貰ってしまったが、皆、異議がない所をみると、自分で告白する勇気はないが、自分のチョコを受け取って欲しいと密かに想いを寄せている子も少なからず居る様だ


やる事は決まった、後は予算の算出と材料の買い出し

3年生男子、担任男性教師にだけとは言えかなりの数になるだろうし、あげるとしたら一人あたり1個のトリュフあたりが妥当だろう

料理部の子達の協力の元スイーツを作ってそれを手芸部でラッピングする


入部してから3年間、文化祭などの大きな行事の時以外は町内会のみなさんから端切れ等を貰って極力経費を使わない様にしてきた

部費の残りは部活動一かもしれない

「東雲先輩、材料費、包装代合わせて予算このくらいになると思うのですが・・・」

電卓に弾きだされた数字は貯金していた部費に僅かに足りない…


部員に席を離れる間、担当の割り振りを決めておく様に告げ、家庭科室を出ていく


1階まで降りるとあるドアの前で足を停め、ノックする

中から返事が聞こえてからドアを開け中に入る

「一鶴さん」

理事長室と書かれたドアを開けると中の立派な椅子に腰かけている理事長の姿が映る

「折り入ってお話があるんです。」

この人がこの手の話しを断る筈がない

事情を説明すると二つ返事で「ok」が出た

臨時の部費として領収書は学園宛てでいいらしい

急いで部室に戻り、買い出しに行く為に学園を後にした




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