1stSS
□Valentine'sDay-2010-
1ページ/7ページ
毎朝7時、まだあまり人のいない学校へと登校する
職員室へ入ると、コートを掛け、鞄を与えられた机へと置き、HRに使用するプリント類をきちんと纏めて用意する
すべての教室の鍵が収められている鍵ケースから音楽室の鍵が無くなっている事を確認して、職員室を後にした
グラウンドの方から運動部の走り込みの掛声が聞こえる
その声を遮る様に教室のドアをガラリと開いた
ふわっと少し冷たい風が通り抜ける
教室へと足を踏み入れてドアを閉めると、教室の空気が少し暖かくなった
「おはようございます、氷室先生」
挨拶をしてきた東雲 澪に対して
「おはよう、今日も早いな」と返す
ピアノの椅子を少し引き、そこへ腰を下ろす
澪がフルートを持って駆け寄る
楽譜をパラパラとめくり、フルートを構える
教室の空気がシンと静まり返り、人差し指を動かすと、それに合わせて演奏を開始する
そこにはいつも通りの風景があった
フルートを吹く澪を時々止めて指導する
ただ今日は澪の様子がいつもと違いミスが多く、良く見ると瞳は少し赤みを帯びていて、合間に良く目を擦っていた
「どうかしたのか?」と尋ねても「すみません、大丈夫です」とまた集中して楽譜に目線を戻す
あまり寝ていない様子の澪に内心、朝練は強制ではないのだからゆっくり寝てから登校するといいだろうにと考える
それでも必死に集中する彼女の姿を見ているととても口に出して言うことは出来なかった。
普段の澪の練習態度は、とても熱心なもので、そんな彼女からは、今日の練習態度は違和感を覚えるものだった
「先生?」
気がつくと今度は零一が澪に覗き込まれていた
「どうでしたか?さっきの演奏…」
自分で集中仕切れていない事がわかっている為が心なしか声のトーンが低くなっていた
「うむ…注意が散漫し過ぎている為、本日の練習はここまでにしよう」
HRまで少し休んでいなさいと付け加え彼女を椅子へ座るように指示する
鞄を机に置いて椅子に腰を下ろし零一の前へ座る
「君は頑張り過ぎる節があるので、体調の優れない日などは休むようにしなさい」
「はい、ごめんなさい…」
とうつむき加減に返事をする
.