小説(原作沿い)

□未来のユメ
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視界できらりと光った。
太陽の光を身にまとった青年が、黒鋼に話しかけていた。
それが、長くのばされた髪であることに、黒鋼は気づく。
金の髪は、日本国では珍しい。
異国人なのか、とぼんやり思った。
会話は成り立つらしい。
己がなにかいうと、相手はくすくす笑った。
目の前の出来事が他人事のような気がするのは、どこか真上から見ている気がするからだ。
当人たちでは、ないというか。
目の前のことを、ぼんやりどこらか見ているといった方が正しいのかもしれない。
(というか、そもそも)
黒鋼は、目の前の金髪の青年に会ったことがなかった。
日本国では、前述したように金髪のものはいない。ほぼ全員が黒髪だ。
異国といえば、日本国では貿易をしているためたまに、城で異国人に会うくらいだ。
知り合いなどいない。
だからこそ、黒鋼は頭に疑問符を浮かばせるしかなかった。
金髪の青年は、中性的な容姿をしている。
髪は腰まであり、赤い髪ひもで結われていた。
目は、蒼い。
空や海を想像させるような深い澄んだ色であり、綺麗だと黒鋼は思った。
目の前では、なにかについて会話しているのだろう。
目がまるくなったり、ふふふと笑んだり。
金髪の青年の表情は目まぐるしく変わる。
見ていて飽きない。
視線がはずせなくて、ずっと見ていたくて。
笑っていてほしくて。
笑ってたら、嬉しくなって。
じんわりと心が温かくなった。
(なんだ、これは)
手をのばしたが、そこにいるのに届かない。
青年が口を開く。
「ー…って」
言葉は、やはり聞き取れず。
光が黒鋼を包む。
はっと目を覚ますと、黒鋼は白鷺城の自室にいた。
ザーと雨音が、耳に届く。
遠征からかえり、天帝たちに報告。自室に帰ったあと、そのまま忍び装束のまま寝ていたらしい。
上体を起こして、背伸びをし、立ち上がる。着流しを、と箪笥から帯とともに取り出し着替え始めた。
なんの夢をみていたのか。
思い出すことはできず、ただなにかを逃してしまったような。
なくしてしまったような。
喪失感を抱いた。
とは別に、なにかをみつけた高揚もある。
不思議な感覚だった。
なにか、とは、ものだろうか?
ひとだろうか?
黒鋼は眉をひそめる。
黒鋼の両親は、黒鋼がこどものときに亡くなった。
以後、知世姫を主君とし忍者として仕えている。
あれから己は最強を目指すようになった。大切なものを奪われないようにするためだ。
己の身を、手を、鮮血で染めても、後悔したことはない。
そんななりふり構わずな己であったが。
夢は、気になった。
「見つけに行けばいい話か」
一言呟き、黒鋼は
いつのまにか晴れた青空を見つめた。


◇◇◇◇◇
数年後。
知世姫に、とあるところにおくられ、黒鋼は旅に出ることになる。
ついた先は、次元の魔女が主のミセ。
次元移動できる白い魔法生物、記憶の羽を探す姫、姫の幼じみの少年。
そして、金髪の魔術師とともに、記憶の羽を探す旅に出ることに。
まじまじと魔術師を見つめる黒鋼に、「変な黒いひとー」とへらりと笑われた。
奇しくも、彼らと出逢いの日も雨が降ったあとに晴れるという、
通り雨の日であった。


end.



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