■時事短編■
□甘いイタズラ/10月
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今年こそ、あなたにイタズラを仕掛けよう。
毎年、いいようにあしらわれて、イタズラどころか、お菓子さえくれない意地悪な彼に。
今年こそ、「参った」と、言わせる為に…
■甘いイタズラ■
「…毎回毎回、ホント飽きねぇな、おまえ…」
溜息混じりにサスケくんが言った。
表情全面に、遠慮なく、呆れたと表して。
だけど、今更それくらいで怯まないし、ヘコまないんだから。
「今年こそ、サスケくんに参ったって言わせるんだから!」
その為に何ヶ月も掛けてイタズラを考えたんだからと言うと、いよいよその表情は憂鬱そうになった。
「…おまえ、暇なのか?」
「そっ、そんなことないわよっ!!」
ただ、サスケくんをぎゃふんと言わせたいの。
意地悪なあなたはいつだって余裕綽々で。
私一人が夢中で。
それがちょっと、悔しいから。
「覚悟してね!すっごいの考えたんだから!」
「…あっそ。」
「やめてほしい?やめてほしいならお菓子ちょうだい。」
改めて、サスケくんに、「トリックオアトリート!」と言ってみる。
サスケくんは一人テンション高い私をしげしげと眺めると、もう一度、溜息。
「おまえ、イタズラしたいのか?それとも、菓子がほしいのか、どっちだよ?」
不意にそう聞かれて答えに窮する。
「…え?うーん…どっちがってコトはないんだけど…ただ、サスケくんと一緒に楽しみたいなぁって思って…」
「楽しそうなのっておまえだけなんだけど。」
「そっ、それは、サスケくんのノリが悪いから!!」
とはいえ、ノリノリのサスケくんはちょっと見たくないかも…
うーん…。
思わず考え込んだ私を気にも留めず、
「とにかく、俺はこれから任務だから。おまえもいつまでもそんなガキくさいことやってんな。」
そう言い残して部屋を出て行こうとする。
「まっ、待ってよ、サスケくん!!」
慌ててその背中を追い掛けた私に、サスケくんは突然、くるりとこちらを向くと…
「………。」
しばしの沈黙。
何が起こったのかわからなくて。
今、自分の身に起きたことが信じられなくて。
「行って来る。」
ばたん、とドアの閉まる音がした途端、私はへなへなとその場に座り込んだ。
――やられた…
そうして、がっくりと項垂れる。
口の中いっぱいに広がる、甘い、甘い味。
「…不意打ちしようと思ってたのに…」
返り討ちに遭ってしまいました…
「サスケくん、ズルイ…」
でも、ニやける顔は抑えられなくて。
「…これってサスケくんのイタズラなのかなぁ…それとも、私にイタズラさせない為のお菓子だったのかなぁ…」
そんなことを考えた。
口の中いっぱいに広がった甘い甘い味。
触れた唇から広がった甘い甘いあなたの味。
口の中でコロコロと転がして。
それを受け取った時に、触れ合った唇を指でなぞって。
マヌケな私は今更ながらに、またしてもサスケくんに一本とられてしまったことに気付いた。
…今度こそ、必ず…!
■甘いイタズラ FIN■