■時事短編■
□還る場所/8月
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何だか、とても厳かな気分…
鏡に自分の姿を映しておかしいところはないかチェックする。
どうしようか迷ったけど、髪の毛は束ねてまとめ上げた。
それだけで何だか気持ちが凛としたものになるから不思議。
「準備出来たか?」
声のした方を振り返る。
「うん。」
柔らかく微笑むと、彼も小さく笑った。
今日の彼の笑顔は本当に穏やかで。
時折見せる、いつもの哀しみに深く沈んだものじゃなくて。
不謹慎だと分かっているけど、私も嬉しくなった。
「行くぞ。」
彼が玄関の扉を開ける。
きっと、今日は特別な日になる。
「サスケくん、距離ってどれくらいあるの?」
歩く彼の隣に並んで訊ねる。
「歩いても15分くらい。」
「そっか。」
いつもみたいにお喋りを楽しむ気分にはなれなくて黙って歩いた。
お互い無言のままだったけれど気まずい雰囲気は微塵もなくて、凄く自然な事のように思えた。
彼の左手には花束。
お線香は私が持ってる。
これから私達が向かうのは、うちは一族の弔われているお墓。