■時事短編■

□星に願いを/7月
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七夕の日に願いを込めて

あなたなら
何を願いますか?




「…何だ、これ…」
過酷な任務を終え、2日ぶりに帰宅したサスケは部屋に戻るなり呟いた。
「あ!サスケくん。おかえりなさ〜い!」
振り返りサクラが笑顔で迎える。
「…何やってんだよ、おまえ…」
ベランダで一人格闘しているサクラに近付く。
「何って見たら分かるでしょ?ちょっと待っててね。これ立てかけたらすぐご飯にするね。」
そう言いゴソゴソとしているが、
「きゃ…」
手にしていたものを支えきれずにバランスを崩す。
あわや、そのまま床に転がるかと思ったがサスケに抱き止められて事なきを得た。

「ご、ごめんね…」
ありがとう、と羞恥するサクラを片腕で支えたまま、
「…ったく…お前は何でも限度ってもんを考えろ。」
転びかけてもなお、サクラの手に必死で掴まれていたものを空いている方の手で取り上げた。
サスケに呆れられサクラはサスケの腕の中で小さくなる。
「なんでこんなデカいのを買うんだか…」
大きなため息を吐いてサスケは手にした笹をベランダに立てかけ手際よく固定した。
「もっと小さいのがあるだろ。」
サクラを見やると、
「だって…大きい方がたくさん飾りとか短冊とか付けられて豪華かなぁって…」
バツが悪そうに言った。

明日は七夕。
イベント好きなサクラの事だから、笹を買ってくることくらい容易に想像は出来ていたが、彼女が買ってきたらしい笹はサスケが腕を伸ばしても先端に届かない。
この大きさは二人分の願い事を吊すにはあまりにも大き過ぎる。

「家族全員分吊す気かよ…」
何気なく言ったサスケだったが、
「やだ、家族なんて…」
と、一人頬を赤らめたサクラにサスケは本気で呆れを隠せなかった。


「サスケくん、何て書いたの?」
無理矢理短冊を書かされ、ふくれっ面のサスケはサクラから期待のこもった眼差しを向けられる。
「…任務成功。」
「それだけ?」
短く答えたサスケにサクラは不満そう。
「特にないからな。」

欲しいものはもう、手に入れたから。

見るとサクラは相当な量の短冊を書いていた。
「…おまえ、多すぎだろ?」
再び呆れるサスケに、
「だって…書くだけタダだし…」
と、サクラ。
「どれが一番なんだよ?」
何気なく手にした一枚に書かれていた彼女の願い事にサスケの表情が和らぐ。

「あっ!ダメ!」
慌ててサクラがサスケの手から短冊を取り上げる。


一番の願いはいつだって同じ事。


「…サクラ。腹減った。」
うきうきと短冊を吊す彼女の背中に声を掛けると、
「あっ!そうだね。ごめんね。先にご飯食べようか。」
サクラはバタバタと台所へと消えて行った。
皿を並べる音を聞きながらサスケはこっそりと笹に近付き、一枚の短冊を自分が届く一番高い場所に吊した。
この高さならサクラに気付かれることはないだろう。

欲しいものは手に入れた。
これ以上望むのは、きっと贅沢。

けれど…

もし願い事があるとしたなら…


『サスケくんとずっと一緒にいられますように』


サスケは一人含み笑うと、夜空を見上げた。

明日も晴れますように。
そして、この願いが天に届きますように。

願いは、いつだって一つだけ。
祈ることは、いつも君のことばかり。


『サクラが幸せでありますように。』




■星に願いを■
       ■FIN■

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