■短篇■

□コーヒーとミルク
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苦いコーヒーでも、ミルクを入れればほら…


優しい味になる。





「サスケくん、お砂糖は?」
訊ねる私を見ようともしないで、
「いらない。」
短い返事が返される。

「ミルクは?」
「いらない。」

相変わらず、手元の巻物を熱心に読み耽っている。


「ねぇ、コーヒー冷めちゃうよ?」
せっかく淹れたのに。

というのは口実。
ちょっとくらい構って欲しい。

「うるせぇな…勝手に飲むからほっとけよ。」
寄越された言葉にちょっとヘコんだ。

「サスケくんってコーヒーみたい…」
「…はあ?」
ポツリと漏らした私にサスケくんは、やっと顔を上げてくれた。


「サスケくんていっつも淡々としてて、意地悪だし飲み物に例えたらコーヒーみたい…」


彼の性格は、まさしくすごく苦いコーヒー。

彼のその強い信念は、まるで何にも染まらないコーヒーの黒のよう。

甘くしないと飲めない私は、いつもその苦さに挫けそうになる。


相手にされないことが悔しくて、私はサスケくんの頬に軽く口づけた。

サスケくんは睨みつけてきたけど、その顔は真っ赤。


不意打ちに弱いのよね。


照れ隠しに頬をつねられた。



「…要は拗ねてんだろ、おまえ…」
少しだけ、呆れたように言うサスケくんに、

「…だって、サスケくん相手してくれないんだもん…」
口を尖らせた私。

サスケくんは優しく笑って頭を撫でてくれた。



あなたがコーヒーで、私がミルク。

どんなに苦いコーヒーでも、ミルクを入れれば、色も味も、優しいものになるのよ。



あれ?

じゃあ、お砂糖は…?





■コーヒーとミルク■
       ■FIN■

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