■短篇■

□可愛い彼女の扱い方
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目の前に所狭しと並べられた豪勢な料理。
その一品一品に箸をつける度、
「…おいしい?」
神妙な面持ちで向かいに座るサクラが尋ねてくる。
「ああ。」
もう何度目かの問答に、サスケは苦笑を隠せなかった。
「よかった…」
胸を撫で下ろすサクラもやはり、何度目か。

「…いい加減、おまえも食えよ。」
こちらの様子を窺ってばかりで、サクラは箸すら握っていない。
「…うん…」
生返事のサクラに、
「どうした?」
聞くと…
「…なんか…胸がいっぱいで…」
食欲がない、とサクラ。
「は?」
サスケは返す言葉をなくす。
…呆れて。
「…ばかか…おまえ…」
サスケの遠慮ない言葉と表情にサクラは、
「だって、サスケくんにご飯作ってあげられるだけでも幸せなのに、おいしいって言ってくれるからもう憾無量なの。」
少し、拗ねたように言った。
「…じゃ、マズい。」
それも今更だがそう言うサスケに、
「ヒドーい!サスケくんの意地悪ー。」
サクラが頬を膨らます。

本人はおそらく隠しているつもりだろうが、台所の戸棚の隅の方にたくさんの料理本があるのをサスケは知っている。どれもくたびれているのは、サクラの自分への愛情の証のようで素直に嬉しい。
自分の知らない所で、自分の為に努力してくれている彼女を愛しく思う。

「作ってくれても、おまえが食わないんじゃ、一人で食ってんのと変わんねー。」
溜め息混じりに言えば案の定、
「別に食べないわけじゃないよ!?」
慌ててサクラが箸を取る。
判りやすい奴。
サスケはこっそり笑って黙々と箸を動かした。

どの料理も、本当においしい。
ただ…

「どーでもいいけど、いつも量が多いんだよ。」
二人しかいない食卓なのに、料理はいつも軽く3、4人分はある。
「…つい、張り切っちゃうんだよね…」
照れくさそうに笑うサクラに、
「太るぞ。」

何気なく言った言葉はサクラの反感をモロに買ってしまった。

「悪かったよ。」
延々続くサクラの抗議に、サスケが折れる。
サスケが折れるなんて珍しい、と感心するサクラだったが、
「食った分、運動すればいいしな。」
サスケの言葉に、ぴたりと口を閉ざした。
どういう意味なのか、考えあぐねていることが容易に推測出来るので、
「おまえ、責任持って付き合えよ?」
そう言ってにやりと意味深に笑い掛けると、みるみる顔を真っ赤にしたサクラは、
「…サスケくんのばか…」
俯き小さく言った。

サスケは純情過ぎる彼女に頬が緩んだ。



サクラの考えはお見通し。





■可愛い彼女の扱い方■
       ■Fin■

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