■小説■

□霞桜
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立ち並ぶ木々の間。

この小径を抜ければ―…





■霞桜■





「どこまで行くの?」

訊ねた私を振り返り、いつもの意地悪そうな顔で笑う。

「もう少しだから。」

そう言って、また前を向いてしまう。

何故か楽しそうなその背中。
そんな様子、彼にしては珍しい。


径の両脇は背の高い木々が並んでいて。
その生い茂った葉の隙間から零れる日射しは僅かばかりで周囲はまだお昼なのに薄暗い。

サワサワと吹く風に葉が擦れる音と、時折遠くで鳥の囀りが聞こえる。


「ねぇ、まだ先なの?」

私がもう一度訊ねると、今度は歩く足を止めて振り返る。


「ほら。」

私の言葉への返事がない代わりに手を差し伸べられる。

単純な私はそれが嬉しくて零した不満もどこへやら。

その手を強く、強く握った。



あなたが、一人で遠くに行かないように。









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