*憂鬱

□憂鬱すぎる毎日。
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今日のハルヒはえらく上機嫌だ。こういうときは大抵俺が巻き込まれ、その次に朝比奈さんが迷惑を被る。部室に訪れる度に何度俺はハルヒに無理矢理着替えさせられている場面に遭遇したことか。ご愁傷様、と言いたいところだが、俺もハルヒに迷惑を被っているので言えた立場ではない。
…にしても、今日のハルヒの突拍子な発言には参った。俺はいつものごとく朝比奈さんが淹れてくれたお茶に口をつけていてほっとしていた矢先―ばん、と豪快に部室の扉が開いた。その音に、嗚呼我らがSOS団団長ハルヒのお出ましだ、と思ったのはもはや俺だけだろう。机を挿んで俺の目の前に座っている男をちらり、と一見するが、奴は別にハルヒのすることに何の疑問も感じやしない。ホント変わった奴だ。いや―変わってるのは俺を除くコイツ等の方だが、この際何も言うまい。とにかく、その発言を前言撤回してくれないか。

「…あのな、涼宮」

はぁ、と腕の関節を机につき、自由を持て余している手に額を乗せると呆れた表情を見せ息をつく。このパターンとハルヒの突拍子な発言にはかなり参ってるが、このことを言ったとて俺の言うことを素直に聞くような奴ではない。そんな呆れた俺とは反対にハルヒは頬を軽く膨らませ俺につかつかと足早に近寄ってくる。そして、近寄ってきた―と思いきや、ずい、と顔を近づけ文句のみを吐き棄てると、ハルヒは離れ窓際に設置してある団長机に向かって歩き出した。

「いーい、キョン?これは、団長命令よ!!別に副団長の古泉くんと一泊してきてもいいじゃない。みくるちゃんとならよかった、なんて馬鹿な考えは私が許さない。明日どうせ暇なんでしょ?だったら、宇宙人でも超能力者でも得体の知れない生物でもいいから探してきなさい!!せっかく古泉くんが気をきかしてキョンをタダで泊めてくれるっていうのに。こんなチャンス、滅多にないわよ」

「………」

何でこうハルヒは滅茶苦茶なことばかり言うんだ。そして突っ込みどころがありすぎるのは俺の気のせいなのか?
またしても特大ため息をつきそうになっていた俺に、机を挿んで目の前に腰掛けている男がいきなり口を開き、話に入ってきた。

「…まぁまぁ、涼宮さん。僕は一応提案として言ったんですから、キョンくんに拒否権はありますよ。ねぇ、キョンくん」

にこり、とこちらに笑みを向け話を持ちかけるのはやめてくれないか。というか、拒否権がどうのこうの言う前に俺は、ハルヒと同様コイツに逆らうことは何一つとしてできやしない。

「…古泉、」

「ん?何ですか?キョンくん」

相変わらずの余裕の笑み。俺はそれに腹がたって、がたん、と椅子から立ち上がり部室から出て行こうとした。だが、しかしそれを許す奴は誰一人としていなかった。まず、俺の意図に気付いたハルヒが俺より先に足早に部室の扉に歩き、突っ立っていたのだ。その上凄い剣幕で。次に俺を軽く怒らせた張本人がいつの間にか俺の背後にいて、ぎゅ、と背後から抱きしめられるまで、俺はそれに気が付かなかった。

「ちょ、離せっ!!おい、古泉!!」

俺はじたばたと古泉の腕から逃れようとするも、やはり男だ。力の強さは格段に俺とは違う。中々俺を離さない古泉に疲れて、俺は大人しく捕まる羽目になってしまった。

「…別にいいじゃないですか、僕との仲を涼宮さんに見せ付けるいい機会ですよ」

「なっ―」

コイツも俺を脅すのが得意な奴だ。だから、俺は大人しく従ってしまうのだ。ハルヒにもコイツにも。
大人しくなった俺に、ハルヒは得意げな顔して腕を組み、そうよ、それでいいのよと偉そうに云った。

「私から逃げ出そうなんて100年早いわ。いーい、キョン?古泉くんもありがと。でも、古泉くんがさっき言ったキョンと古泉くんの仲ってどんな関係なの?そっちの方が気になるわ!!宇宙人よりも超能力者よりも得体の知れない生物よりもいい情報が手に入ったわ!!さーて、キョン…覚悟しなさいよ」

「ちょ、待て…ふざけんな!!」

ハルヒが物凄い楽しそうな笑みを見せて俺に近寄ってきたのは―勿論云うまでもない。まったく、どうして俺ばかりこんな目に会うんだ。いや、俺がハルヒに選ばれてしまったのが悪いのだろう。勿論、ハルヒに関わらずその俺との仲を話した張本人も悪いのだが、何故かハルヒは俺の所為ばかりにしたがるのだ。もう、訳が分からない。なぁ、もういい加減にして俺の普通の生活を今すぐ返せ―――!!
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