*tennis

□愛のかたち。
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―――好きだ、好き。
この気持ちが永遠に続くならば、今こんなに乱れた世にはなっていないはずだろう、そう感じた。

「…うぜぇ、」

最近、季節は夏から秋に変わって、後二日も経てば自分と彼の誕生日月である十月。
この間まで暑い暑い、と汗を無意味に、そして大量に流しながら部活をしていたのに、時間のように過ぎていく日にちは明日という未来を止めることは適わず、いつのまにか流動的に未来と過去を行ったり来たりしていた所為か、気が付けば人肌が恋しい季節になっていた。
寒い寒くないに関わらず、自分は『彼』という人肌が恋しくなるのだが、それを態度で示すと彼の機嫌は益々急降下していくが、男であるからにはこの欲求は止められそうにもない。
彼も同じ男ならこの気持ちが分かるだろうに、とぼやいたことがあったが、返答はない、の一蹴だったことを思い出し、彼を抱き締めながら背中越しに苦笑していると、さっき放たれた言葉がこれである。

「誰が抱き締めていいっつったよ、あーん?うぜぇから離れろ」

「んなこと言うても、ホンマはこうされるん好きな癖に」

「はっ、都合のいい解釈しやがって。離れなきゃお前の使いモンにならねぇくらい再起不能にしてやるよ」

今日は何を言ってもダメなようだ。彼の言葉や表情は抱き締めている所為でそれを垣間見ることはできないが、いつもより機嫌悪いのは確かなようで。
では何が有効的なのだろうか。
今このままどさくさに紛れて、彼の服の中に手を突っ込んで悦楽を与えていくなんてことをしたら、火に油を注ぐようなものだ。
そうしたいのは山々だが、再起不能になるのはごめんだ。
では、彼の機嫌を和らげるにはどうすれば―そもそも今日は何で機嫌が悪いのか…記憶を掘り返してそれを辿っていけば、線と線は結び付いた。

そうだった、今日何でこんなに機嫌悪いのかって、自分の態度が原因だったことに漸く気が付いた。
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