そのた
□まだ何も見えない夜だけど
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例のシーンをわざわざ擬人化で書く鬼畜。
血表現あるよ注意してね。
予想外の場所から響いた一発の銃声。
振り向けば先の指導者の振りかざす銃から上る硝煙と、崩れるように膝をついた師の姿があった。
状況は最悪だった。裏切り、減った味方、増えた敵。
頭が混乱する。どうしたらいいのか、何をすべきかもわからない。
視線を落とせば血で染まった己が両腕。抱き上げたあの人はまだ温かくて、でも戦闘から戻り駆け付けたオペ室に横たわっていたあの人はもう冷たかった。
結局、血に濡れたあの人を置いて行くしかなかった戦闘でも仇を討つどころか逃げるのが精一杯だった。悔しい、悲しい、わからない感情が渦巻く。
震える体をあの人の赤で染まった腕で抱きしめた。
アイアンハイド……。
助かった筈なのだ。あの人は。
でもアイアンハイドは次に狙われるのが俺達だとわかって仕込みの銃を抜き取り……2発目の凶弾に、倒れた。
コンクリートに倒れ込み血を吐いた姿、抱き上げた俺の腕を掴んで「行け」と言った絶え絶えの声、力無い手が離れる瞬間、全て覚えている。忘れられない。
どうすればいい?わからない。混乱する。
胸に穴が空いたような感覚が堪らない。
「こんな所に居たのか。」
振り返ればラチェットが居た。風に翻る白衣にいつもの白さは無く酷く汚れていた。
「メディカルチェックを受けて即刻休め、と言われなかったか?」
ぼんやりと考える。よく覚えていないというのが本音だ。
彼はそっと俺の頭を撫でた。
「さぁ戻ろう、サイドスワイプ。検査後にコーヒーぐらいは出そう。」
「…どうすればいい?」
戻ろうと背を向けたラチェットにかけた問いはほぼ無意識に投げたもので、でも誰かに聞きたくて仕方なかったもの。
振り返らない背中にもう一度。
「俺は、俺達は…どうしたらいいんだ?」
カツン。靴音と共に彼は振り返った。
「道は既に定まっているだろう?……覚悟は、あるか?」
覚悟。
何の、とは聞かずに口は答えを返していた。本当はそんなものがあるのかさえわからぬままに。ただ本能に近い感覚のままに。
彼は笑った。
「覚悟あるならば、後は戦うだけだ。さぁ戦争だ。」
嗚呼、愚かにも今だ何もわからぬままだけど……戦いの日は、近い。
血を吐くとか、はためく裾だとか、乱れた襟元だとかの描写が好きだから擬人化ばかり妄想してしまう。