戦国無双

□サクラ
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三成といわゆる恋仲ってやつになったのは、まだ元服する前だった。
もっとも今ではそれも若気の至り、過去の出来事になりつつある。

一緒にいる時間は極端に減った。
さらにいえば文才に秀でた者達と武芸に秀でた者達などといつの間にか派閥分けされて、お互いの仲間が周りを固めてるから話をすることすらままならない。



それなのに、おねね様は……

「じゃあ清正、三成の事頼むね!」
「はぁ……いや、ねね様……」

家臣総出の花見は羽柴家の恒例行事だ。
潰れるまで呑むのも恒例だ。
でも俺はどうしても片付けないといけない仕事があって、宴の途中だが城に戻る事になった。
そして、ついでにとばかりに真っ先に酔い潰れた三成を任された。

「春といってもまだ風は冷たいからねー。三成じゃ風邪引いちゃうよ!」
「……でも俺は」
「清正はもう力も強いからね!三成だって背負って帰れるでしょ!」
「まぁ、そうですけど…」
「じゃあ、よろしくね!清正!」
「………………はい」

で、俺は結局三成を背負って城へ向かって歩きだした。




三成の寝息が首筋にあたって落ち着かない。
ひたすら歩く事だけに集中する。
しばらくすると突然、三成の腕が俺の首を、絞めた。

「ぐぇっ!」

完全に油断してた俺はカエルみたいな声を出してしまった。
三成の腕はすでに力が抜けてる。ゆるりと三成の右手が右側を指し示す。
つられるようにそちらを見れば美しい枝垂れ桜が一本。

「きよ…きれいだろ?」
「ああ……」

呂律の覚束ない言葉からするとまだ半分夢の中のようだ。ちゃんと覚醒してれば「下ろせ!」と喚くはずだから。
だが三成の言う通り、その桜は美しくて、暫し立ちすくむ。

「お前……桜、好きだったよな?」

昔、桜の枝を贈って喜んでくれたのを覚えている。
どうしようもない切なさが押し寄せた。
そんな俺の心情など知らず三成は目元を擦りながらつぶやく。

「ん……きよまさのこと、すきだ……ぞ?」

まさに不意打ちだった。
俺は馬鹿みたいに動揺した。

「はぁぁあ!?おおぉぉぃい馬鹿!いきなり何言って……」
「くー……」
「ね……寝てる…?」

どうやら寝ぼけて無意識無自覚で言ったらしい。
一人で慌てた俺がホントに馬鹿みたいだ。

「……っっっ!」

背中で寝息立ててる三成の事なで気にせず、花吹雪の中を走り出す。




「俺もまだ好きだぁ!!馬鹿野郎!!!!」




End
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