文章
□ある日
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ふいに
懐かしさを感じて外を見る
見えるのはグラウンドだけでこれといった珍しい物も無い。
つまらない授業に飽き飽きしてきて,そのまま外を眺めていたら,視界の外れの窓の桟をスルスル上るトカゲが一匹。
(あ,トカゲ… ビルじゃないかしら)
なんてひとりごと
口の隙間からチロチロ動く舌に指を絡めてみる。
くすぐったくて,懐かしくて,なんだか寂しくなってきた
(あなたは今どこにいるの?)
ほぅ,と空を見上げたところで答えが分かるはずもないのに。
気付いたらトカゲは消えていた。
ぬくもりさえも消し去って。
END