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□A strawberry
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『失礼します』

「はいは〜い、どうしたのか…な…」

『かれん…、榛名(ハルナ) かれん、いますか
?』

「……」


保健室に入り、かれんについて尋ねると
私に近づいてきた保健医は、立ち尽くした
ままになる。



『…聴いてますか?』

「…ああ! かれんちゃん? いるいる!」


やっぱり、ここにいたんだ…。

教室にはもちろんのこと、授業にも出ない
し…。

それでも成績は常に上位をキープしてる
から、かれんのおじさまも、なにも言わ
ないんだろうけどね。

まあ…だから余計に周りの人たちは、
面白くないって思うのよね。


……っていうか。



『あの…』

「ん?」

『手、離して頂けませんか』

さり気なく、人の手を取って握って…。

なに考えてるんだ、この保健医は…。



「ん〜、どうしよっかなぁ〜」


はい?

ワケのわからないことを言い、満面の
笑みを浮かべる、目の前の保健医。

なんなの…、この人…。



「君の名前は?」

『…名乗る義務、ありません』

あなたみたいな軽そうな人に、名乗る必要
ありません。



「ヒドいなぁ…」


泣き真似したって、知りません。



「俺は、知ってると思うけど、保健医の
鈴原 一斗だよ」

『…そうですか』

「反応薄っ! 俺…かなり君に嫌われて
ない!?」


まあ、好きではありませんね。

でも大丈夫です。

ここは女子校…しかも、男性に疎いお嬢様
ばかり。

その出立ちであれば…あなたを好いて
くれる女性は、この学園内外に山ほど
います、ご安心を。



「うぉ〜っ!」

『煩い…』

本当に、なんなんだろ…この保健医。



「あ、綸…」


仕切りカーテンが開き、捜していた人物が
漸く、姿を見せる。

普段はほんと無表情で…なに考えてんだか
わからない所もあるけど。

あたしにとっては、小さい頃から一緒に
いる…手の掛かる、妹みたいなもの。

唯一無二の存在、と言っても過言じゃない




「かれんちゃ〜ん!」

「…なんですか」

「リンちゃんが、俺のことイジメてくる
よ〜」


…殴っても、いいですか?



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