U

□cherry pink
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『…綺麗だね…』

「…そうだな」


薄桃色した綺麗な花びら。

風にふわりと舞い踊る。

その優雅さに目を奪われ、一面をピンク
色に染め上げられる。



- cherry pink -


春眠暁を覚えず、とは良く言ったものです
孟浩然さん。



「ふぁぁ…」


明日、桜が見頃を迎えます、とテレビのお姉さんが言ってたから、予定していた
デートの行き先は、桜並木の連なる土手に
(勝手に)決めた。

お弁当よし。水筒も持った。
準備オッケイ!

逸る気持ちを抑えつつ家を飛び出し、
いおにぃを迎えに行くと…寝起きの
あなたと、欠伸つきの返事が私を待って
いた…。



「ふぁ〜…」


そんないおにぃを、なんとか起こし、
なんとか着替えさせ、なんとかお花見の
為に引っ張り出してきた…私の苦労も露
知らず…隣で大欠伸をする者が若干一名
…。

出掛ける前からヘロヘロ、テンション
がた落ち。

もう、泣きたいです、私…。



『も…雰囲気ぶち壊しっ、いおにぃ!』

柔らかな日差しに、ぽかぽか陽気。
春特有の長閑さを垣間見せ。

こんな麗らかなお天気だから…眠気が襲い
来るのも、その誘惑に乗せられそうに
なっちゃうのも、仕方ないことだとは
思うけど…。

でもでもっ、久しぶりのデートらしい
デートなんだからっ…それに年に一度しか
できないお花見だから…楽しくやりたい
じゃない。

空気読んで、いおにぃ!



『いおにぃ、起きてるっ!?』

「…頭に響くから…大声出すな…」


ちゃんと聴こえてる、って…そんな言い方
しなくても…昨日までお仕事でお疲れ
なのはわかるけどさぁ…。

沈んだ気持ちで空を見上げれば、空色と
桜色のコントラストが広がる。

遊歩道と称した小道の両側に桜の木は
林立し、花が咲くと空一面に桃色が広がり
まるで桜のトンネルを通っている気分に
なる。



『…きれい…』

沈んだ気持ちを払拭してくれるような
透明感。

柔らかな自然の配色に目を奪われている
うちに、曇った気持ちが晴れてくるのが
わかる。

そうだよね、せっかくお花見に来たんだし
…私一人だけでも楽しまなくちゃ!



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