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□Uneasy Angel
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天使は、空から舞い降りて来るのか。



「きゃぁっ……!」

『危ないっ…』

そもそも、天使なんてこの世に存在する?

天国なんて楽園、あるのか…?


そんなこと、天使しか知らない。


頼りない、俺の天使にしか…
知り得ないことなんだ…。



- Uneasy Angel -


一つ、訂正しよう。

どうやら…天使は空から舞い降りて来る
ようだ。

間違いなく。
確実に。

何故、そんな不確かなことを、はっきり
言えるのかと問われれば…答えは簡単。

たった今、この瞬間、舞い落りてきたから


目の前に。
俺の腕の中に…スルリと。

軽い衝撃と共に。



「あ……!」


小さくて、ふわふわした、可愛らしい
天使が。



「…あのっ…」


鈴を転がしたように鳴く声に、ハッと我に
返る。

…天使じゃない。
天使の筈がない。

何故なら、彼女の背中に羽は生えていない
から。


俺の腕の中で大人しくしがみつく少女を
見て…白昼堂々、俺は何て現実味のない
ことを考えてしまったのだろう、と嫌悪
する。



「…ごっ…、ごめんなさい…っ、私…」

『…怪我は? どこも痛くない?』

「はい…っ…大丈夫です…」


名の知れたお家の、大事なお嬢様を預かる
からには…怪我一つ、させられない。

扱いは最後まで丁寧に。

抱き止めた身体を、ゆっくり下ろし…
地に足を預けさせる。



「あの…、貴方様は…お怪我は…」


アナタサマ。

流石は長い歴史を誇る、名門のお嬢様学校
の生徒。

気品に溢れ、礼儀が備わってますこと。



『大丈夫だよ』

「良かったぁ…」


俺の言葉を聴くと、花の様に、恥じらい
ながら頬笑みを見せ。

その頬笑みはとても可憐で。

見ているだけで、心が穏やかになって
いくのがわかる。

そう、長らく…俺に訪れることのなかった
心の安らぎを間近に感じては…、擽ったい
ような感覚さえする。


なんて、心地良いんだろう…。



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