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□Scarlet
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「こっちもいい」

『……』

「でも、こっちも好き」

『ミィ』

「どっちがいい? おじさん…」



- Scarlet -


ミィの嫉妬。

俺からしてみれば、嫉妬と言う程でもない
些細なものだったが。


好きな女からは、いつでも、自分だけを
見ていてもらいたい。

嫉妬は、愛情の裏返し、だと俺は思う。

まあ…普段から、気性を荒げたりしない
ミィだからこそ、妬かせてみたかった、
という本音も孕んではいるが…。

結果はご覧の通り。

嫉妬しても、嫉妬した自分を責め、
俺の為に涙を流す、可愛らしいミィが
そこにいた。

泣かせてしまったことには、幾分か、
罪悪感を抱いてしまったが…。



『…ミィ、出掛けよう』

「…ん…ぅ…?」


早朝。

昨晩は、嫉妬のこともあり…就寝が
早かった為、仕事が休みにも関わらず、
何時もと変わらぬ時間に目を覚まして
しまった。



『買い物に付き合ってくれないか』

「…ん」


とろんとした目を擦り、曖昧な返事をする。

まだ眠たそうな、というよりは、今から
また、眠りにつこうとしているミィに
迷惑極まりなく話しかける。

睡眠妨害もいいところだな。



『すまない…。ゆっくりでいいから…』

もう少し、休んでなさい、と言うと。



「んみ…」


徐々に、下がってくる瞼。

前髪を軽く撫で、瞼にキスを落とす頃には
再び、夢の世界へ誘われるミィがいた。


無理もない。

昨晩は…ミィを、激しく求めたからな。

ミィがダウンするのも、当然のこと。



『ミィ…』

俺の腕に閉じ込めて。

ぬくもりを肌に直に感じて。

鼻先に、軽くキスをすると、身じろぎ、
俺の胸に収まる。

そんなミィを見ては、安心して…俺も
ゆっくり、瞼を下ろすのだった…。



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