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□You and me.
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何故、あんなことをしでかしたのか。
そんなこと、今思ってみてもわからない。
何故、俺らしくもないことをしたのか。
そんなこと、知れるものなら、俺も知り
たい。
知っていれば…後戻り出来ない程の
深傷(フカデ)を負うこともなかった…。
気づかなければよかった。
でも、俺は気づいてしまった。
君を、欲していることに。
君を、愛してしまったことに…。
- You and me -
家には、ネコがいた。
黒目がちな瞳に、艶のある黒髪を持って
いた、ネコ。
従順で、俺に懐いていた、ネコ。
洗濯も、掃除も、料理も…何でも出来た、
ネコ。
そんな俺のネコが、忽然と、俺の前から
姿を眩(クラ)ましてしまった。
ポツ、ポツと、窓に叩きつけてくる
雨の粒を、ぼんやりと眺める。
ガラスに叩きつけられた雨粒は、細い線を
描き、重力に従って流れ落ちる。
一緒に過ごしたのは、ほんの僅かな期間
だったのに…こんなにも色濃く、俺の中に
君の遺香が残っている…。
ザーッ、と途端に強さを増す雨音は…
まるで俺を非難しているようで、耳障りに
感じてならない。
雨を降らせる、どんよりとした暗黒の雲は
まるで俺の心を代弁するかのよう。
『…ミィ…』
何度となく呼び続けたこの名前。
返事が無いことは百も承知。
でも呼んでしまうのは、根付いてしまった
俺の癖だから…今更直すことなんて出来
そうもない。
決して満たされることのない日常に突如
落とされた俺は…暗い暗い、二度と出られ
ない闇の中に、一人、置き去りにされて
しまった…。
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